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【第180通常国会】 衆議院・国土交通委員会 ○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。 私も、事故に遭われた方々にお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。 そして、きょうの参考人の貴重な陳述に改めて感謝したいと思います。 この際、私の質問の立場について最初に述べたいと思います。私は、今度の事故でとうとい人命が失われている、それを防ぐことができなかったのかという角度から問題点を明らかにしなければならないと思っています。 かつて、あずみ野観光のスキーバス事故がありました。この教訓を生かして対策を行っていれば防げたかもしれない。また、総務省の貸切バスの安全確保対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告がなぜ実行されなかったのか、実行されておればどうだったのか。さらに、根本的には、この間の規制緩和路線を真剣に検証しなければならないと私は思います。 国交省の責任は極めて重大だと私は考えています。この事故を機会に、高速ツアーバスの安全をめぐる問題点を深くえぐって教訓を導き出し、本当に事故が再び起きないようにするための万全の措置をとらなければならないと思います。 そこで、まず、なぜ違法状態がこれほど蔓延しているのかという問題です。小田参考人は、ここまで乱れたのかとおっしゃっていました。 今回事故を引き起こした運転手が違法な日雇いだったことはもはや明らかであります。そして、名義貸しなど三十六もの法令違反が指摘されています。法令違反はこの事業者にとどまらず、貸し切りバス業界にある意味では蔓延している。 総務省の調査では、旅行業者との関係では、貸し切りバス事業者の九七%が届け出運賃額を受領できていない、このように述べています。また、〇七年四月の、あずみ野スキーバス事故を受けて国交省が行った重点監査でも、貸し切りバス事業者の六四・六%、ツアーバス事業者の八一・〇%に法令違反が見られたと述べていた。 業界で、なぜこうした違法状態が正されず蔓延しているのか、小田参考人と村瀬参考人にお聞きしたいと思います。 ○小田参考人 私は冒頭に、驚きだというような意味のことを発言し、気持ちとしては正直な感想なんですね。ただ、旅客運送事業のバス事業の中で長年やってきて、こういう立場で答弁するような人間としては、やはり十分に把握できていなかったということについては反省とじくじたる思いはございます。 一点、具体例で申し上げますと、私のところは成田空港輸送にも関係しているわけでございますが、中国の方だとか東南アジアからのお客様も大変ふえております。成田におり立った方々を都内や関西方面に足を提供するという意味で、観光バスがよく使われております。陸援隊も、この輸送を主としておやりになっていたようでございます。 我々の認識としては、そういう外国からのお客様をあの料金ではとても受けられないということで、仕事がほとんど、例えば千葉県内のしかるべき協会加盟の事業者などはどうしても入札等に漏れてしまう。そういうことをああいう、いわば参入の許可条件が比較的甘い中で入ってきて大量にふえて、監査の手も理想にはほど遠い状態でしかできていない、それが何をやっても構わないんだ、規制緩和の中で、高い料金でやること自体が何か体質が古いというような、そういう中で、例えば成田に外国の方が、東南アジアの方が見えたときにでも既にあらわれているわけです。何だかえたいの知れないバスがお客さんを運んでいるらしいよと、業界の中ではそういううわさなり話がたくさんあるんです。 ただ、我々みずからがある種の権威を持ってそういうのを調べたり指導したりということは現状ではなかなかできませんので、そういう意味で把握が十分でなかったということでございます。 そういう現状を生んでいるものについては、再三申し上げているとおり、今度の事故は、考え方をちょっと変えると、旅行会社、貸し切り事業者、それから運転者それぞれが、法的に問題があるか、たくさんの違反を起こしているわけです。 だから、考え方とすれば、今あるルールを厳格にきちんと守れていれば、例えば六百七十キロにしても、国土交通省の指針によれば、あれは六百七十キロを超えていると思われます。そういう今のルールさえ守れていない。まずは守ることが極めて重要だという言い方になると思います。その上で、今次さらに、安全性を高めるための今ある基準の見直しと、二段構えで物を考えてもよろしいのではないかと思います。 例えば六百七十キロについて言うと、貸し切りバスの、夜行や昼間を問わず一日の運行の運転者の最大キロでございますから、例えば六百七十キロを三百キロにすればいいんだということになると、日中の、例えば東京から下田へ行くだとか、東京から二本松へ行くだとか、東京から三春の滝桜へ行くだとか、こういったものというのは微妙な距離にあります。一般道路が長うございまして、これを二倍にするという中で、事業者は商品ごとに距離の計算をして、これで何とかクリアできる、こうやっているわけでございますから、一律に夜も昼間も三百キロにすればいいんだということについては非常に慎重に考える必要があると思っています。 ○村瀬参考人 先ほどのあずみ野観光の事故をもとに、我々、高速ツアーバス連絡協議会をつくって、全体の安全の底上げをしていくということを目指してやってきました。その中では、常々法令遵守ということを申し上げてきたんですけれども、今回こういうようなことが起きたことを非常に残念に思っております。 その中で、今回の問題ですけれども、やはり旅行会社が、バス運行管理の知識がない中で無理な依頼をしたり、法令遵守意識の低い貸し切りバス会社に、意図する意図しないにせよ依頼してしまうリスクが存在するということが、我々協議会も、貸し切りバス会社の安全性をどこまで旅行会社として見られるかというところが一つの課題かなというふうに思っております。 〔委員長退席、小宮山(泰)委員長代理着席〕 ○穀田委員 では、国交省に聞きたいと思うんです。 今ありましたように、何をやっても構わないみたいな事態が起こっているということまで言われていまして、守っていればとありました。違法状態が蔓延化して、それで、どこが崩れているか。安全対策が崩れているんですよ。起こるべくして起こったというふうに労働者の方々は言っておられますよ。そこを私は見なくちゃならぬ、今のままでは違法状態はなくならないと思います。 事故を防ぐ上で、今、守っていればとありましたが、最低限、違法状態の根絶は不可欠だと思うんです。国交省に聞きますけれども、なぜ違法状態がなくせませんか。 ○中田政府参考人 ツアーバスを運行する事業者の状況につきましては、国土交通省におきまして、立入検査等を通じまして、多数の法令違反があったことを確認してございます。違反のあった事業者に対しましては行政処分等によって是正を図ってまいりましたが、結果として、法令遵守の改善が進んでいないと認識してございます。 特にツアーバスにつきましては、ツアーを主催する旅行業者と、そのもとでツアーバスを運行する貸し切りバス事業者という、二つの事業者の構造の中でこの貸し切りバス事業者の法令違反が多くなっているという側面が背景にあると考えてございますが、いずれにいたしましても、今まで我々、立入検査の中で法令違反を把握し、その是正を図ってきたにもかかわらずこのような状況であるということを改めて知らされまして、まことに遺憾に思っております。 その意味で、これまでのルールを守らせるという取り組みが不十分であったという認識のもとに、先ほど小田参考人からも御指摘がありましたように、まずこのルールを守らせるということについて、国土交通省としてこれから全力を挙げてまいりたいと考えてございます。 〔小宮山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕 ○穀田委員 私、中田局長に一言言っておきますけれども、今まで守らせる立場をきちんととっていたんだったら、できたことは何ぼでもあるんですよ。大体、おたくのところは総務省から言われて、旅行業者が命令をいろいろしてやっているということは出ているわけですよ。あなたのところが調べても、そこがひどいという話はわかっているんですよ。だから、そこをぐっと締め上げて、きちっとやれば少しはましだったということを、私はあえて言わせていただきたいと思うんですね。 そこで、次に、では法令が安全を守る歯どめになっているのかという問題です。御意見を伺いたいと思います。 今、皆さんから六百七十キロの話がありました。安部参考人からも村瀬参考人からも話がありました。国交省のこの基準、六百七十キロと決めた根拠は、一日の運転時間の上限が九時間とした運輸規則の規定から算出したものなんですね。もともと、そのもとになったのが厚労省の改善告示、すなわち、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準を出発点にしているんですね。だから、それを遵守したとしても、拘束時間は最大一週七十一時間三十分、四週で二百八十六時間。これを時間外労働に直しますと、一カ月で百十五時間以上の時間外労働を容認することになるわけですね。 ですから、この問題について、自交総連の労働者を初めとして、厚労省が定めた過労死認定基準をはるかに上回る基準になっているじゃないかということで厳しく指摘されているわけですね。労働者からは、劣悪な労働条件そのものとして批判が出ています。これが一つ。 もう一つ、五月七日放送のNHKクローズアップ現代「検証 高速ツアーバス事故」で、バス会社の社長の証言は極めて重要です。仕事量をふやすには価格を下げるしかないんですよ、うちは安全を守れない、バスの今回の関越の事故についてね、これはもう人ごとじゃないです、はっきり言って、あすは我が身というのを絶えず考えている、こう言っているんです。つまり、価格を下げる、賃金を下げなければやっていけない、そうしたら安全は守られないという現状告発の発言なんですね。 交通運輸機関で安全を担保するのは運転にかかわる労働者なんです。労働者の労働条件を改善しない限り、安全確保はできない。労働者の置かれている実態の改善に着手して、過当競争、そして次に起こるダンピング、そしてその次に待っている労働条件悪化、それで安全ないがしろ、この悪循環の根を絶つことが必要ではないか。 ですから、この点の考え方をお三方に、できたら簡潔にお願いしたい。 ○小田参考人 我々、どうしても自分の経験してきたこと、自分の周辺のことから集約した言い方になりますが、乗り合いバス会社というものは、道路運送法上の四条、五条の許可を受けて、それで初めてできるわけでございますが、形としては、営業所というものは認可に基づいてありますけれども、これは事実上、運行管理所みたいなものなんです。 乗り合いバスの営業所というのは、定期を売ったり、回数券を売ったり、切符を売ったりということもございますけれども、基本的には、営業所イコール運行管理所。運行管理をしっかりやることによって法も我々を守ってくれる、こういう立場で何十年もやってきた、それが乗り合いバス会社。貸し切りバス事業者についても、私の知る限りでは、そういう優秀な会社、きちんとしている会社はたくさんございます。 ところが、例えば高速ツアーバスというのは、先ほど新しい需要を掘り起こしたとか、私もそういうことについては評価するにやぶさかではございません。しかし、営業が最優先で生まれ、その運行が貸し切り事業者におろされている、こういう図式。営業があって、運行管理の方が中心になって運行が行われているわけではない。例えば、今度高速ツアー会社が乗り合いの高速バスに移ったとして、移ってこられた側は、これからは運行管理にかかわる投資に私はお金がかかると思います。かけていかざるを得なくなるわけです。 我々の方はむしろ、ツアーの高速バスが開拓した、いわゆるネットの販売ですとか集客の新しい仕組みだとか、こういうことがある意味では欠けているわけで、こちらの方に多分精力を、運行管理の問題は別にして、進む方向になるだろうと思っております。そういう意味で、一本化するということは、お互いが補えなかった部分がこれで明白になってきちんとできる、そういう方向になるだろうと思っているわけです。 的がちょっと外れたかもわかりませんが、よろしくお願いします。 ○村瀬参考人 高速バスは、お客様が望むサービスと安全というのが当然両立して初めて商品となるというふうに考えております。ですので、当然、この安全ということのコストを考えた上で、その上での自由競争というふうには考えております。 先ほど私の説明させていただいた中で、商品をインターネット上で比較して予約ができるということが今まで現実的にできたということもお話しさせていただいたんですけれども、今後は、ここを、安全の見える化ということでお客様が商品を選ぶためにはどうするかということを協議会でも考えていき、安全に必要なコストを各社がかけ、それをユーザーがちゃんと判断して予約ができる、ひいては、その安全のコストをかけた分がバス事業者に行くというような仕組みを構築していきたいというふうに協議会では考えております。 ○安部参考人 運輸産業の中でも、鉄道ですとか航空の場合は人間のエラーをバックアップするシステムが、システム産業ですからありますので、例えば鉄道ではATSというようなものがありますが、バス、タクシー、トラックにつきましては、人間の、ドライバーのエラーをバックアップする装置がございません。したがって、ドライバーが事故に対して物すごく大きく寄与するということであります。 過労運転ということはやはり避けないと安全が確保できないというふうに思っておりまして、二十年前に、労働省時代に改善基準告示というのができたわけでありますが、実は、当時からなかなかこれ自体が守られていないという状況にありました。改善基準自体の水準が適正かどうかというような問題はさておきまして、これ自体もなかなか守られていないという状況で、この十年間、規制緩和の中で一層その状況があるのではないか。 ですから、法律を守るようにするということが現実的になかなか、監査の手段では難しいと私は思っておりますので、やはり入り口のところで少し、最低限の労働条件等が担保できない企業については入れないようにする。こういうことを考えないと、後から守らせるというのはなかなか難しいのではないかというふうに考えております。 以上です。 ○穀田委員 私、安部先生から今お話ありましたように、最終的には運転手のところが安全の最後のとりでだし、最大のとりでだと。そこの現状がどうなっているかというところに着目しないとだめだという立場なんですね。だから、国交省が一日九時間などというものを決めてやっていること自体がおよそ意味がない。だから、仮にその法令を守ったとしても、それを守ったからといって、安全というのは私は担保できないという立場であります。 そこで、一貫して皆さんから出ているバス事業との関係での自由化、規制緩和なんですが、先ほども小田参考人からありましたように、当初からは倍になっていると。私は、あえて誤解を恐れずに言えば、白バス行為を行っていた業者さえも参入できるようになったというのが現実じゃないかと思うんですね。 安部先生も著作で指摘していますけれども、運輸事業のように、何よりも安全が求められる産業において過度の競争が組織された場合、それは輸送の安全の基盤を掘り崩してしまうことになると。私はここが一番大事なところだと思うんですね。私は、他の問題についても、人の命を預かる運輸事業においては絶対安全が必要だと主張してきました。したがって、直接命にかかわるところでの規制緩和は間違いだと私は思います。 国交省は事後チェックで万全を期すから大丈夫などと主張してきましたし、先ほど国交省は、効果的に実施すればというようなことを言っています。だけれども、十二万社を超える運送事業者を、幾らふえたといって、三百二十人で監視することなど到底不可能、こんなの絵そらごとですよ。だから、要するに入り口のところでチェックしなければならない。そこで、私は今後、再発防止を行う上で、規制の強化が必要だと。どこが肝心か、ポイントか、そこの点をお三方に伺いたいと思います。 そこで、一つ、参入資格の厳格化。二つ、適正な賃金と労働条件の改善。これは、オーストラリア連邦議会ではトラック運転者安全賃金法案を可決しました。道路交通産業における労働者に、適切な強制力を持つ最低保障賃金、労働条件を決定することとしました。これを参考にすべきじゃないかというのが二つ目。三つ、事故を起こしたバス会社に対して仕事を発注していた旅行会社の発注者責任を問うこと、こういうことも必要じゃないか。この三つの点について私は考えているんですね。 ですから、その点に対する皆さんの御意見を伺えればお三方にお願いしたい。 ○小田参考人 幾度か申し上げておりますけれども、ふえ過ぎて、ある意味では、事後の手が回り切れないほどふえているというのは素直に認める必要があると思います。そういう中で、これからも同様の、資格に結果的に欠けるような事業者が同じルールで新規参入で入ってくる部分については、従前と違ってハードルを高くする。これがまず第一点、必要だと思います。 それから二つ目は、何度も申し上げていますように、今、四千社近くあるわけでございますけれども、この既存の事業者のレベルアップは業界としても何としてでも、行政とタイアップする中で、一事業者ずつのレベルを上げていく。具体策を実行しようとしておりますが、これをやっていく必要があるのが二つ目です。 三つ目は、事業者がふえ過ぎてしまっている中で、実際、貸し切りバス業界というのは、旅行業者から仕事を受けて、それで営業していく、こういう形が大部分です。もちろん、エージェント依存というのは会社によっていろいろ率の違いはございますが、エージェントなくして貸し切りバス業界は成り立たないぐらいの関係にございます。 その旅行業者と貸し切り事業者のアンバランスな力関係が今日の低価格、例えば平成四年と現在で、貸し切りバス業界が受けている営業収入というのは四五%も減っちゃっているんです、業界全体の収入が。そういう中で、事業者が、平成四年対比だと三倍にふえているんです。当然のことながら、生き延びていくには、引受単価を安くして、仕事を常にもらい受けるような形をとらざるを得ない。いわばこれが、最後の、古い車両を使うだとかにあわせて賃金の問題、労働時間の問題に影響していると思います。 したがって、冒頭申し上げたことを繰り返しますけれども、三つの視点の対策が的確に行われれば、その結果として、賃金問題、労働条件問題も一定の水準に維持できる状態が生まれると思います。 ○村瀬参考人 貸し切りバスの新規参入に関しましては、規制を強化することで安全の確保が進んでいくというふうに考えております。 あと旅行業者に関しましては、今、旅行業に対するところの国家試験もありますけれども、そこの中に、今後、旅行業者が手配する者に対して、運行管理であるとか労働基準法であるとか、こういうところも把握をしていただくということも非常に必要じゃないかなというふうに考えております。 こういった中で、とにかく安全が確保されていくことによって、まさに安全を握るドライバーの、乗務員さんの賃金等の安定が図られればというふうに考えております。 ○安部参考人 貸し切りバスの問題とツアーバスの問題は整理をして考える必要があるのではないかと思います。新しく莫大な数がふえた貸し切りバス業者全てが、ツアーバス、今回のような長距離の二点間を結んでいるような輸送をしているわけではないというふうに思います。 ツアーバスと高速乗り合いバスの制度を今国交省の方は一体化しようというふうにされていて、それを前倒しということで、これはこれでよろしいのではないかというふうに思います。 その際、そういう新しく二点間を結ぶ高速の遠距離バスで、その場合の夜行のバスについては、例えば、運行管理者を必ず夜、営業所に配置をすることなどなど、こういった基準を少し厳格にして、夜の安全が確保できるようなことをして、その資格をクリアできる者が、新しく発足する制度の高速のバスの事業ができるということにする。そういうことがあり得るのではないかというふうに思っております。 貸し切りバスの問題については、参入をどうするのかについてはまた別途、別の枠組みで考えていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。 以上です。 ○穀田委員 期待をしております。 私は最後に、旅行業界と貸し切りバス会社、現場の労働者の代表を招致しての参考人質疑をやはりもう一回やるべきだということを提案しておきます。 以上です。 |
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