|
【第180通常国会】 衆議院・国土交通委員会 ○穀田委員 きょうは、安全問題について羽田大臣に聞きます。 この間、七人の方が亡くなられた関越道での高速ツアーバス事故、それから航空のトラブルなど、公共交通、運輸事業にかかわる安全対策が焦眉の課題となっています。 私は、一昨年来、日本航空の再生問題、パイロットや客室乗務員の不当解雇問題に関連して、航空の安全について歴代の大臣に聞いてまいりました。 まず、例として挙げますと、一九八五年の御巣鷹山への日本航空機墜落事故の教訓を述べた当時の日航会長はこう言っています。「日本航空全社員はこころを一つにして「絶対安全」の確立を誓います。」「「絶対安全」の極限に挑戦する」。この発言を示し、文書を示し、この絶対安全こそ、再建にとって極めて重要な視点だと提起しました。 当時の大畠国土交通大臣は、絶対安全の気概が大事だ、絶対安全を原点、基点にと述べて、安全に対する認識を披瀝しました。前田前大臣も、安全確保がまず第一の条件だと答弁しておりまして、ほぼ同様の認識と言えるでしょう。 そこで、大臣の交通運輸の安全全般についての認識をお聞きしたい。 ○羽田国務大臣 公共交通において、輸送の安全確保、これは最大の使命であると考えております。JR西日本福知山線の事故を受けて平成十八年に成立した運輸安全一括法により、公共交通関係の各事業法において、「輸送の安全の確保が最も重要であることを自覚し、絶えず輸送の安全性の向上に努め」ると規定されているところであります。 国土交通省といたしましても、公共交通において輸送の安全確保を最優先の課題として、万全の対応を図っていく所存であります。 ○穀田委員 羽田大臣は先ごろの所信でも、安全の問題は大前提と言っています。大臣が述べた項目は航空についての項でしたけれども、これは当然、航空だけでなくて、貸し切りバスなど全ての公共交通機関、旅客運送事業に当てはまる。 つまり、私が言っているのは、法はそうなんですよ、わかっているんですよ。問題は、大臣として、法令の問題についての文書を何か引用して、もちろん最大の使命であることは確かですよ。だけれども、安全というのがどういう位置にあるのかということについての大臣としての見識を問うているわけですよね。その辺はいかがですか。 ○羽田国務大臣 所信でも述べさせていただいたとおり、安全というのが大前提で公共交通というのは進んでいるというふうに思っております。 ○穀田委員 もう一つ確認しておきたいと思うんですね。 今私が述べましたように、歴代の大臣は、絶対安全、それから安全確保が第一条件と。今お話あったように、大臣は、安全が大前提。ということは、事業者だとか経営者にとってどういう意味を持つのかということが一つありますよね。もう一つは、例えば車の場合などでいいますとハンドルを握っている方、また飛行機でいえばパイロットだとか客室乗務員だとか、そういう安全運行を直接担って働いている人にとってどういう意味を持つのかを考える必要が当然あるわけですね。 そこで、実際は、利益優先、安全ないがしろというのが多くて、労働者にもそれを押しつけるという経営者がいるわけであります。ある経営者は、利益なくして安全なしと言っているんですね。これは、安全ばかり言うな、利益を上げることを優先しろという趣旨で、安全と比べてどちらを優先するのかという発想なんですね。これは私はけしからぬと思っているんです。 絶対安全だとか、さらには安全確保が第一条件、羽田大臣が言うところの安全大前提という意味は、利益と比較すべきではない。文字どおり利益以前の問題だということを大臣はどう思うのかということをまず一つ聞きたい。 もう一つは、運輸労働者にとっては、利益云々の前に、安全を自覚し、安全運行できる労働条件、環境が必要になってくる。とりわけ、運行従事者にとっては、乗客の命を預かっている。 先ほど大臣は、御みずから保育士の経験を述べておられました。そうすると、保育士は子供の命を預かっているわけですよね。比較するのはあれですけれども、それと同様の問題が私はあると思うんですね。 したがって、運転手や保育士、運転業務にかかわる人だとか安全にかかわる人だとか、保育士などが、過労によって体調不良に陥るような労務管理があってはならない、当然そういうことがあると思う。 その二つについて大臣の見解をお聞きしたいと思います。 ○羽田国務大臣 私は、安全の確保が大前提だというふうに思っておりまして、これが実は利益につながっていくんだと。利益なくして安全ではなくて、安全があるからこそ利益がついてくるんだというふうに思っておりまして、やはり安全が第一という考え方で物事は進めていかなければならない、人の命が第一だ、こういうふうに考えております。 ○穀田委員 労働者の労務管理という問題については余り触れられませんでしたけれども、要するに、安全が第一であると。 そうしますと、先ほど述べたように、ある経営者が述べている、利益なくして安全なしというのは、これははっきり言って間違っていると私も思いますし、大臣もそういうことだというふうに認識していいかと思うんですね。 そこで、先ほど言いましたように、なぜ私が労務管理の問題に触れたかといいますと、今、三大臣が述べている安全にかかわるスローガンといいますか、みずからの趣旨といいますか、そういうものについては、事業者や経営者にそれを当然守らせて、安全運行を直接担っている労働者が安全を確保できる労働条件並びに環境を整備することが政府、行政の責任だと私は思うんですね。つまり、安全というものを実行していく上で、働いている労働者はそれを担うわけですから、そこの条件や環境を整備することがなければ担保できないわけですから、そうだと思っているんですね。 日航は、二〇〇五年のトラブル多発で業務改善命令が出されたのを反省して、有識者を招きまして安全アドバイザリーグループを立ち上げました。そのアドバイザリーグループは、いわゆる更生手続に入る前に、これは何度も私、引用しているんですけれども、大事なので言っておきますけれども、提言を出しています。そこには、「安全への投資や各種取り組みは、財務状態に左右されてはならないのであって、相対的に見るなら、財務状況が悪化した時こそ、安全への取り組みを強化するくらいの意識を持って、「安全の層」を厚くすることに精力を注がなければならない」と指摘しているんですね。 それだけじゃないんです。実は、更生計画案にすら、私どもいろいろ批判はありますけれども、その中にさえ、「厚い安全の層を後世に継承していく責任がある。」こう述べているんですね。 ですから、政府というのは、少なくとも安全にかかわる問題についての重要な指摘は守らなければならない、そういう責任があるということを自覚して取り組まなければならぬと私は思っているんですね。それは同意いただけると思うんです。 そこで、日航は、この九月に再上場を目指して手続を開始しています。営業利益も最高を更新しているし、再生計画は順調のように報道されています。ところが、危惧される事態があると私は思っています。安全運航に影響する人員はきちんと確保されているのか、支障が出ているんじゃないかと思うわけです。 日航は、ことし四月に、来年から二百人の客室乗務員の新卒者採用を発表しました。私は、四月の当委員会で、問題じゃないかと指摘しました。なぜなら、整理解雇の係争中に新規採用というのはまさしく身勝手じゃないかと。自分たちは事業を縮小して、人手が余っているといって勝手に首を切って、気に入らない労働者を追い出して、今になって人手が不足しているということ自体が問題だということを私は言いました。 そして、そればかりじゃなくて、今度さらに既卒者を緊急募集し、七月から採用すると。日航社内では五百十人と労働組合に提示されたそうです。一般になぜこれが公表されていないかというと、昨年四月以降、五百七十四人以上が退職しているから、その補充のようなんですね。 国交省に確認しますけれども、退職者が相当いるというのは事実なんですか。 ○長田政府参考人 お答え申し上げます。 日本航空に確認をいたしましたところ、先生御指摘のように各四半期ごとに退職者が出ているのは事実でございますが、その数につきましては、破綻前の二〇〇八年、二〇〇九年当時と比べまして格段にふえている状況ではない、期によって若干ふえたり減ったりしておりますが、二〇一一年になってから格段にふえている状況ではないというふうに聞いております。 ○穀田委員 どうもあなたの話はわからぬね。五百七十四人という話は事実ですねと聞いているんですよ。言ってごらん。 ○長田政府参考人 退職者の具体的な数につきましては、航空会社の、個別企業の事項にかかわりますので、全体の数を申し上げるわけではございませんが、大体各期ごとに百名超の退職者が出ているのは事実でございます。 ○穀田委員 それは、前の数字も含めてはっきりしなかったら、そんなことを言っていたらあきませんわな。 問題は、事実だとすればこれは大変だということなんですよ。だって、日航の客室乗務員の人数は五千四十五人ですよ。二〇一〇年末に八十四人を解雇して以来、退職がとまっていないわけですよ。昨年四月からことしの三月末までに、人員の一割強に当たるわけでしょう。前期とかなんとかいって、そんな軽々しく扱う問題じゃないんです。 なぜそういうことを言っているかというと、日航の職場では植木義晴社長が、あなたは期ごとで変わらぬというようなことを言っているけれども、二年間離職率がふえている、特に若い人がやめていると聞いていると、慰留を呼びかけるビデオメッセージまで流されているんですよね。相手がそのぐらい言っているのに、こっちがつかんでいる方は大して変わらぬなんということを言っている。こんなあほなことがあるかと私は思います。 それぐらい危機感を持って彼はやっているんですよ。慰留を呼びかけるビデオメッセージまで流されているんですよ。今言ったように、二年間離職率がふえている、特に若い人がやめていると言って呼びかけているんですよ。 この状況は、日航の再生を図る更生計画がそのとおり実施されていないということになるんですよ。更生計画では、赤字路線を縮小するから、それに合わせた形で総枠で人員を削減した。残った路線を運航する人員を確保していたはずなんですよ。その確保していたはずの人員が五百七十四人も退職したら、飛ばせない。こんな事態を生んだことそのものが経営の失策ではないのか。 個別の企業なんという話じゃないんですよ。国が支援してやっている、そういうことなんですから、きちんと把握して、人数も問題も、せめてそういうビデオになっているとかいう事実も把握しておくべきと違うのかと思うんです。大臣、いかがですか。 ○長田政府参考人 日本航空におきましては、先生御指摘の更生計画を今実施しているところでございます。 その中で、現在の人員でもって運航そのものについて支障が生じているという事態とは認識をしておりませんが、いずれにしましても、退職の理由につきましては、それぞれ理由がございますし、会社としても、個人のプライバシーの問題もありまして、全てお答えするのは難しいということでございます。私どもとしては、各企業の個別の雇用問題については、コメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。 ○穀田委員 個別の問題じゃないと何回も言っているじゃないですか。国が金を出しているんだよ。そこのところが実態はどうなっているか。しかも、争っている。そして一方では、そういうもとで新規の採用もやろうとしている。こんないいかげんな話はないわけで、退職するというのは理由があると思うんですよね。だって、皆さん、過去最高の利益が上がっている、そういう企業の社員が大量にやめていくということ自体が不思議だと思いませんか。 では、大臣に聞きましょう。なぜこのような事態が生まれているのか。どう思いますか。 ○羽田国務大臣 日本航空からは、退職理由については個人のプライバシーの問題もありお答えするのは困難と聞いておりますけれども、いずれにしても、個別の企業における雇用関係に係る問題であるため、国土交通省としてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。 ○穀田委員 個別の企業って、そこら辺にあるどこかの企業とわけが違う。国民の税金を放り込んでいるんだよ。そして、国策として、これを再生させるということまで決めているんですよ、前の大臣を含めて。そして、それをどうすべきかという議論を国会でしているんですよ。その実態がどうなっているかなどということについて、その理由もわからぬと。やめている人の個別の理由を聞いているんじゃないんですよ。何でこんな事態が起きているかということを聞いているんですよ。そういうことも言えないで、どないして安全を守れるのかと私ははっきり思いますよ。この原因をつかんで是正を指導するというのは当たり前じゃないですか。 先ほど大臣も、安全第一ともうけ第一とは違うと言っているわけでしょう。もうけ優先のそういう経営がまさに失敗しているということなんですよ。何度も言うように、営業利益が最高を更新したのは、国の支援を受けて、一万六千人の社員を削減するなど大規模なリストラを進めた結果じゃありませんか。余りにも人員を削減し過ぎた。しかも、削減する必要のないベテランを狙い撃ちで強制的に整理解雇したために、職場に不安と不信が広がっているんですよ。だから、若手を中心に五百七十四人も退職せざるを得なくなってしまっているわけです。そこで個別の企業という話をして、何か関係ないみたいなことを言っているけれども、そんなことないんですよ。 その結果、職場でどういう事態が起こっていると思いますか。現場ではこう言っていますよ。現場は休めず、乗務時間の上限、客乗でいいますと月九十五時間ですよ、それをぎりぎりまで働いてへとへとになっている、不安全事例も重なっていると客室乗務員は訴えているんですよ。これが安全に極めて重要な問題だということの認識がないとしたら、私は、あなたが言っている一番最初の話はうそだと言わざるを得なくなってくる。 しかも、私、きょう持ってきましたけれども、このような状況を裏書きする会社側の文書があるんですよ。日航の大西賢会長名の、「特別安全キャンペーンの実施にあたり」、こういう文書を出しているんですね。そこには、「この二週間ほどの間に、イレギュラー運航や運航・整備・客室・貨物の各領域において、ヒューマンエラーによる不具合事例、人身事故が発生しています。」ということで、発生事例も事細かく全部出して、これはえらいことだと言っているわけですよ。そして、四月十一日から二十七日までを実施期間として取り組んでいると。 だから、人減らし、整理解雇の強要が安全を脅かすということになるという認識があるのか。個別企業の問題じゃないんですよ。空の安全にかかわる問題が、人が減らされている、その結果、こういうことが起きている、安全が脅かされる、こういうことについて何の責任も感じないのかということを問うているんですよ。 ○羽田国務大臣 国土交通省としては、日本航空の運航の安全について、定期的及び随時に行う安全監査等を通じて継続的に監視しており、必要な人材が確保され、安全運航に問題が生じないことを確認しているところでございます。 航空の安全確保は、航空行政の最大の使命であります。国土交通省としては、同社の運航の安全確保のために、引き続き必要な安全運航体制が確保されるよう、適切に指導監督を行ってまいりたいと考えております。 ○穀田委員 だから、安全の指導は必要なんですよ。そういうときに何の事態が起こっているかということについて、一人一人のやめた理由を聞いているんじゃないんですよ。それはプライバシーでしょう。だけれども、これだけやめている、しかも、そのことによって安全が脅かされる事態が起きているという話をしているんですよ。それを、あとはどこかの官僚が書いた文章を読み上げて、それで最後の方に安全の問題だけつけ加える、そんならちもない話はだめですよ。 言っておくと、大畠大臣は当時、日航の社長を国交省に呼んで、人員削減で本来の保安業務に支障が出ていないかを確認するように求めているんですね。そして、絶対安全という原点を忘れないようにしてほしいという要請をしたんです。そして、私どもの質問に応えて行った当時の国交省の立入検査ではどういうことを言っているか。各職員の労務内容の変化に起因すると考えられるトラブルが発生している、ここまで言って、人員削減による労働環境の悪化で安全が脅かされる実態を認めているんですよ。そこまでやったんですよ。今、その事態がさらに起こっているということを私は言っているんですよ。 だから、官僚が書いた文章を読むんじゃなくて、今の事実に即して日本航空の取り組みを監視するということで彼も言ったんです。そこで国交省が立入検査して、こういう事態だということも警告しているんですよ。ですから、絶対安全、あなたが言うところの安全大前提という立場で日本航空の再建をするということについて言うならば、解雇撤回が不可欠だと私は思います。 深刻な人員不足、そして客室乗務員を七百十人も大量に新規採用しなければならない状況というのは、まさに二〇一〇年末の八十四人もの整理解雇は必要がなかったことを証明しているじゃありませんか。七百十名も要るんだと言っているんですから。 解雇されたベテランはすぐにでも乗務できる。そういう意味では、不安もない、解雇を撤回してすぐに乗務させればいい。ですから、そういう問題として扱うのかということが問われているんですよ。国交省として、直ちに現実的対応をとれと指導すべきだと私は思っています。直ちに、解雇した客室乗務員の解雇を撤回して乗務させるよう、指導すべきじゃありませんか。 前田大臣は、解雇の問題は円満に解決を図ってほしい、その立場で指導したいと答弁しているんですね。大臣も最低限それぐらいのことは言って、この問題、七百十人の新しい採用を計画しているという実態があるんだったら、少なくとも、その解雇はおかしいじゃないか、もとに戻せということを指導するべきじゃありませんか。 ○羽田国務大臣 今御指摘いただいたとおり、日本航空の整理解雇について、前田前大臣の御見解は承知をさせていただいております。私としても同じ気持ちであります。 そういう中で、個別の企業における雇用問題にかかわる判断であるとともに、現在、司法の場で争われていることから、その推移を見守りたいと考えております。ただ、前大臣の御見解は承知しておりますし、私も同じ気持ちだということだけお伝えをさせていただきます。 ○穀田委員 原告団の方々は、やはり今、日本航空が抱えている全ての係争事件の解決が最低条件だということで、この問題の早期解決に向けた指導力の発揮をあなた方に求めているんですよね。これは、単なる個別企業だとか、雇用問題だなどといって済まされない問題があるんですよ。だって、その再建に深くかかわったあなた方が指導してきたんです。あなた方というのは、あなたじゃないけれども、国土交通省が指導してきているんですよ。だから、その責任は極めて重いと言わなければならない。 しかも、例えば新規採用ということでいいますと、これは二カ月かかるんですね。今、裁判をされている方々がもとへ戻れば、少なくとも今、解雇されているということを不服として争っているわけですから、解雇をやめて戻れば、当然それは五日間でその訓練は終えることができるわけですね。そういう意味からいっても、どういう意味からいっても、これは人だということを私はあえて言っておきたいと思うんですね。 ついでに言っておきますと、JAL再生タスクフォースは、労働組合の役割についても次のように述べているんですね。組合員のほとんどは、いずれもその職務、すなわち、航空機にお客を乗せ安全に運航する仕事に対して大変な誇りと忠誠心を持っている、タスクフォースでさえこう言っているんですよ。 ですから、そういう一連の経過の中で、持っている役割、物を言わぬ職場をつくるんじゃなくて、安全には物を言う職場が必要だ、労働組合が必要だという立場も、ある意味ではそれは共通の認識なんですよ。そういったところに踏み込んでやらないと、それは書いたものを読んでいるようではだめですよ。 だから、書いたものと、あなたの大前提という話がちょっと乖離しているということを後でよく見ていただいて、私は、今こそ、あれこれ条件をつけずに、きちんとした指導をすべきだということを言っておきたいと思っています。 次に、もう一つ言っておかないとあかんのでやりますけれども、高速ツアーバス問題についてやりたいと思うんですね。 国交省は、事故を受けて、今夏の多客期の安全確保のための緊急対策を決めています。当面の対策としては、私は必要なことだと思うんです。 そこで、今後検討すべき内容も早急に行って対策をとっていくべきだと思うんですが、私、この間、参考人質疑のときに最後に言ったんですけれども、この問題の打開のためには、当面、実際にバスを運転する労働者の意見を聞くことが重要だと主張してきました。それなしに、原因究明も再発防止も、今後の対策も立てられないんじゃないかと。 そこで、タクシーやバス労働者を組織する自交総連が国交省などに提出している要望書について確認したいと思います。 この要請文書では、「この事故の背景には、規制緩和による貸切バス事業の過当競争激化、運転者の労働条件の悪化がある。」「交通機関にあって安全を担保するのは、直接、安全に運転に携わっている運転労働者である。この労働者の労働条件を改善して、安全運転で生活できる賃金・労働時間を保障しない限り、真の安全は確保できない。」このように述べています。 さらに、「政府は、この間の交通運輸事業の規制緩和政策を真しに検証し、必要な規制の強化をはかるべきである。」と述べて、六点ほどの要望をしています。この要望について、対応状況を国交省と厚労省に聞きたいと思うんですね。 簡単に言うと、届け出運賃の違反の是正をせいということだとか、それから、法違反の日雇い、アルバイトを一掃するための指導を強化せいと。それから、低運賃や無理な運行というのは、押しつける旅行業者を指導しろ。高速ツアーバスの監査を強化して、高速乗り合いバス規制の緩和を行わないこと。さらに、交代運転手の配置基準は一日五百キロメートル以下とすること。深夜運行はツーマン化せい。それから、自動車運転者の労働時間の改善のための基準を法制化しろ。 こういう六つのことを言っているんですが、検討状況についてお聞かせ願いたい。 ○中田政府参考人 お答えを申し上げます。 今委員から御指摘ございましたように、ことしの六月十一日、「高速ツアーバス等貸切バスの安全規制の強化について」ということを国土交通省として打ち出させていただきまして、その内容の第一として、ことしの夏の多客期の安全確保のための緊急対策十項目を挙げさせていただきました。 それに加えまして、引き続き検討すべき事項として、参入規制のあり方の検討、運賃・料金制度のあり方の検討、監査体制の強化、処分の厳格化等九項目を具体的に挙げてございます。 今委員御指摘がございました、自交総連から御要望がございました、届け出運賃の問題、無理な運行がないようにする、監査を強化する、配置基準を定める、それぞれについて今検討を始めてございます。 特に、具体的に申し上げますと、交代運転手の配置基準の問題は、この事故が起きた当初から非常に問題になってございました。これにつきましては、専門家会合を既に立ち上げて、実は本日、二回目の検討会を実施してございます。この具体的な内容につきまして、早急に結論を出したいというふうに考えてございます。 ○津田大臣政務官 厚生労働省でございます。 今、穀田議員から御指摘をいただきました運転者の労働時間にかかわる件につきましては、先ほど国土交通省からもお話がございましたが、高速ツアーバス等の過労運転防止のための検討会、これが、第一回が五月二十九日、第二回が本日行われております。本日の会合の中では、運行距離と乗務時間のあり方について検討がされているというふうに承知をいたしておるところでございます。 厚生労働省としましても、自動車運転者の労働条件の改善を担当する立場で、労働基準局長をこの会議に出席をさせておりまして、検討会の議論に参画をしているわけでございます。改善基準告示の見直しにつきましては、検討会での関係労使、今、労働者の話も聞けということでございましたが、労働組合はもちろん、使用者側の話も含めて議論をお伺いした上で、国交省と協議をしながら対応してまいりたいというふうに考えております。 ○穀田委員 現状はわかりました。 私、この間参考人質疑があったときに質問しましたけれども、一番の問題は、なぜ違反がはびこるのか、違反がとめられないかという問題なんですよね。自交総連の要望の一番目にあったけれども、同じことを言っているんですね。なぜ法違反がはびこるのかということなんですね。今の対応策や答弁を聞いていると、簡単に言うと検討中ということが多くて、法違反を一掃するということはちょっとこのままではできないなというのが実際の率直な感想です。 この間、事故を起こした陸援隊の聴聞会が行われています。陸援隊は二十八項目の法令違反を認めたといいます。この二十八項目の法違反というのは主にどういったものだったのか、なぜこの法令違反をとめることができないのか、この辺を少し述べてください。 ○中田政府参考人 今般事故を起こしました有限会社陸援隊に対しましては、事故発生の翌日以降、三度にわたって立入検査を実施しました。 その結果、点呼の不実施、過労防止に関する措置の不適切、日雇い運転者の選任、名義貸し、営業区域外運送、運行指示に関する違反など、今委員御指摘のように二十八項目についての法令違反を確認し、現在、行政処分に向けた手続を行っているところでございます。 この事業者に対しましては、平成二十年一月に立入検査を行いまして、点呼の不実施のほか、いろいろな記録の記載不備等九項目の法令違反がございまして、それに対しまして、六月に行政処分を実施したところでございます。その後、同年九月に、その処分した内容の改善状況の確認等を行ったところでございます。 しかしながら、この二十年九月から今回の事故発生後に立入検査するまでの間、同社の法令遵守の状況の確認を行えていなかったということから、この間に、先ほど申し上げたような多くの法令違反を是正させることなく大きな事故を発生させるに至ったということは、まことに遺憾でございます。 その意味で、立入検査のあり方について抜本的な見直しを図るとともに、検査体制を充実しまして、実効性のある安全対策を実施してまいりたいと考えてございます。 ○穀田委員 これは、今言われましたように、今から四年前に立入検査をやって、これはまずいといって処分してやっているんですね。その後行っていないということで、野放しになっているということがはしなくも明らかになった。 結局、大きく分けて、名義貸しなど事業運営上の問題、そして運行指示書未作成など運行管理上の問題、さらに日雇い労働や過労防止対策の不備など労務管理上の問題など、これは何をやっているかというと、いずれもやはりコストを減らすためにやっているんですね、彼らは。これでは、人の命を預かって運ぶ旅客運送事業者として本当に適切なのかと思ってしまいます。 しかも、今ありましたように、残念ながらそういうことについて行えていなかった、結果としてそういう事故を導き出したという点でいいますと、法令違反がはびこっているという事態は深刻と言わなければなりません。 私、この間も指摘しましたけれども、例の〇七年のあずみ野スキーバス事故を受けて国交省が行った重点監査でも、貸し切りバスの六四・六%、ツアーバス事業者の八一%に法令違反が見られているわけですね。規制緩和後、事後チェックでの監査を強化するということになっているのですが、十二万もの事業者を全て監査、チェックするのは困難なんですね。だから、いつも、これから見直しとかいろいろ言うんだけれども、むなしく響くと私は思うんですね。 確認するけれども、規制緩和して参入者がふえ、事業者がふえるのは想定できていた。それでも事後チェックで法令違反はなくせると考えていたんですか。それはどうですか、大臣。 ○羽田国務大臣 貸し切りバスについては、平成十二年に施行された改正道路運送法において、需給調整規制の廃止や運賃・料金規制の緩和を行ってきたところであります。これにより、サービスの多様化、運賃・料金の低下など利用者利便の向上が見られた一方、事業者がコスト削減に走り、安全面を軽視するとの懸念の声もあった。 このために、事後的な監視の充実を含め安全対策の強化を図ってきたところでありますが、今回の事故が発生し、これまでの安全対策の実効性が不十分だったということが明らかになり、極めて遺憾でございます。 公共交通機関において安全の確保は全てに優先されるべきであり、安全に関する基準の強化や監査体制の強化、処分の厳格化等を検討してまいりたいと考えております。 ○穀田委員 はっきり言えば、事後チェックで法令違反はなくならないということがはっきりしたということなんですね。 そこで大臣、当時、こういう問題の規制緩和をするときに何と言ってきたかということなんですよ。 今大臣はいろいろいい面を言っていましたけれども、当時、政府の行政改革委員会が九六年に橋本首相に提出した意見書の中で、「規制緩和を行うと労働条件にしわよせが生じたり、安全が確保できなくなるというが、この考え方は、短絡的であり、一般の社会では理解されにくい」と言っているんですね。さらに、「安全性の確保は、経営の根幹をなすものであり」「技術的な安全規制によりチェックを十分に行うことで確保は可能」と言っているんですね。さらにもう一つ、「競争がある場合と無い場合とを比べれば、事業者は競争がある場合のほうが安全に力を傾注する」、ここまで言っているんですよ。これが全部違ったということは、もはや今の時点で明らかなんですね。 実は、この文章はどこから引いてきたかというと、与党の国土交通部門・厚生労働部門合同会議の「高速ツアーバス問題への対応策について」、ここから私も改めて見させていただいた。それは前から出ているんですね。当時の規制緩和がこの問題についてバラ色に描く、これがずっと今まで来ているんですよ。それがうまくいくということが誤りだったという、規制緩和それ自身に対しての深刻な反省と見直しが必要ではないのか。そこはどないです。 ○羽田国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、公共交通機関において安全の確保は全てに優先されると考えておりまして、安全に関する基準の強化、監視体制の強化、処分の厳格化等を検討しております。 ○穀田委員 監視の強化、そういう方策を事後に打ってもそれはできなかった。だって大臣、三百二十人しかいてへんのよ、それをやる人は。何ぼあると思いますか、対象は。十二万事業者を超えているんですよ。いつになったらやれるんですか、そんな事後の強化とか監査とか。そういう話を聞いているんじゃないんです。それは失敗だったというのが今日の事実じゃないのかと。だから、問題は、参入規制を初めとしたそういう規制緩和問題について見直して、そういうことをやらぬとあかんのと違うかということを言っているんですよ。 この間の参考人質疑でも、規制緩和に問題があるとの意見が続出しているんですよ。それは、総務省の調査や事故で明らかなように、安全についての深刻な事態が生まれていることを指摘し、警鐘を鳴らしていると思います。 規制緩和は問題なかったという立場に立っているんですか。そこをはっきりしてほしい。そういう立場に立っていたら、安全対策も小手先のものに終わってしまう。だから、そこの点が大事だと私は思うんですよ。 根本は、安全規制について見直しをし、参入規制という問題についての入り口をきちんと締めなかったらえらいことになる。事後のものを幾らやっても、事実上野放しにされ、法令違反がずっと起こり、事故が起こっている。こういう事態が起こっていることからしても、あれが間違いだったということに到達してやらなければえらいことになるじゃないかと言っているんですよ。それはいかがですか。 ○羽田国務大臣 平成十二年二月に施行されました貸し切りバス事業の規制緩和により、いわゆる需給調整等規制が廃止されたわけでありますけれども、一方で、参入に当たっての安全に関する審査については緩めたわけではないと承知をしております。 国土交通省では、その後さらに安全対策の強化を図ってきましたけれども、今回の事故発生により、参入時の審査から事後的な監視に至るまでの安全対策全体としての実効性が不十分であったことが明らかになったわけでありまして、安全対策の見直しを行わせていただいているところでございます。 ○穀田委員 大臣、何回も言うんだけれども、事後の安全対策強化、監査で事故がなくなったのか、なくなっていないんですよ。そして、法令違反は圧倒的にふえているんですよ。法令違反が野放しになっている。事後のチェックが事実上やられていない。だって、そういう違反をした人たちだってもう一回やっているんですよ。 そういうことを踏まえると、結局のところ、いろいろな後手後手の対策を打ったってだめじゃないかと。参入規制を弱めたことは事実なんですよ。何にも規制を弱めていない、そんなことはないですよ。次にまたありますよ。問題は、規制緩和をバラ色に描いて、安全が強化される、競争が行われればいける、先ほどそう言いましたやんか。「競争がある場合と無い場合とを比べれば、事業者は競争がある場合のほうが安全に力を傾注する」、冗談じゃありませんよ。 これだって、この間私、言いましたやんか、聞いていたかどうかは別として。仕事量をふやすには価格を下げるしかないんですよ、うちは安全は守れない、今回の関越のバス事故については人ごとじゃない、はっきり言って我が身だと考えていると。つまり、価格を下げる、賃金を下げなければやっていけない、そうしたら安全は守れないと言っているんですよ。 問題は、ここに、規制緩和というところに最大の原因がある。この問題についての認識を問うて、それは、あなたが言うようにいろいろなことをやったらいいですよ。しかし、根本は、規制緩和という、当時これをバラ色に描いたことは間違いだった、そのことを今もう一度再検討する必要があるんじゃないかと言っているんですよ。それはいかがですか。 ○羽田国務大臣 運送事業者、公共交通機関においては、安全に関する関係法令を遵守するということは当然の責務でありまして、この法令違反を犯している事業者については市場からの退出を求めていくことが重要だ、こういうふうに考えております。 今般、緊急対策を行ったわけですけれども、安全に関する基準の強化、監査体制の強化、処分の厳格化に加えて、参入規制のあり方についても検討していきたいというふうに思っております。 ○穀田委員 参入規制のあり方も検討すると言うからここでおさめますけれども、法令を守る、それから守らない人は市場から退出してもらう。違うんですって。四千何社にふえた人たち、ふえっ放しなんですよ。退出させることはできなかったんですよ。事後チェックを幾らやってもできなかったというのがこの事例なんですよ。 だから、その法令違反を、法令を守るのは当たり前だ。それが守られない実態を私は告発しているんですよ。なぜ守られないかというと、利益のためには仕方がないと目をつぶっている事態がある、それが今日事故を起こしている。 あなたはいろいろ前に言って、最後は参入規制という問題も少しは考えると言うから、きょうはこれでやめますけれども、その前段は間違っているという事実を述べたわけですよ。やはりお互いに議論は議論としてやらなくちゃ、何の話をしているのかわからなくなるよ。 だから、はっきり言って、そういう事後チェック、法規制ということ抜きに、法令を守れ、守れと言ったってだめだった、市場からの退出はやらせることはできなかったんですよ。その根本はやはり規制緩和にありということだけもう一度述べて、終わります。 |
|