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【第180通常国会】 衆議院・国土交通委員会 ○穀田委員 法案審議に先立って、東北道で発生したツアーバスの事故についてです。 事故に遭われた乗客の皆さんに心からお見舞いを申し上げます。 国交省による事故についての報告書によれば、当該運行の計画上の乗務時間が十一時間三十分であることから、交代運転者の配置が必要だったとしています。先般、国土交通省として、高速バスツアーにおける安全確保の徹底についての通達を発出したばかりです。また、一斉点検、監査を行って、八割の法違反の状況などが判明したばかりであります。国交省監査での乗務時間の未確認も実は報道されているんですね。 事故の真相究明を急ぐこと、そして検査だけでは無理であって、違反をさせない体制、並びに、再三主張してきましたけれども、入り口での規制の強化など、再発防止のために思い切った措置をとる必要があると思いますが、大臣の見解をお聞きします。 ○羽田国務大臣 昨日、東北自動車道において、高速ツアーバスがトラックと衝突し、多数の乗客の方が負傷する事故が発生しました。事故でけがをされた方々に心よりお見舞いを申し上げさせていただきたいと思います。 高速ツアーバスの安全対策については、この夏の多客期の安全確保のために、緊急対策として、重点監査や過労防止対策の強化などを既に実施している最中であり、このような状況で事故が発生したことは大変遺憾に思っております。 事故原因については調査中でありますけれども、国土交通省では、事故を起こした貸し切りバス事業者及び旅行業者に対し特別監査等を実施するとともに、改めて、全ての高速ツアーバス事業者に対し、安全確保の再徹底を指示させていただいたところであります。 緊急対策のさらなる徹底を図るために、地方運輸局が行う夏の一斉点検強化などにより、一層の事故防止に努めていきたいと考えております。 ○穀田委員 安全確保の徹底について、出してこの結果なんですよね。ですから、これだけではどうしようもないとは言わないけれども、さらなるさまざまな対策を打って、本質問題に迫らないと、それから、みずからが行った監査で違法ががばっとあるということがはっきりしているわけですから、そこに対してメスを入れてきちんとやるということがなければ、再発防止という観点からしても、これは必死になって取り組まなくてはならぬということを私は申し上げておきたいと思います。 次に、法案に即して、今回の法改正について聞きます。 一つは、権限の拡充としては、任意の質問権の対象範囲が乗組員、旅客以外の関係者に及ぶことを明確にし、運用をスムーズにする改正であるとの説明でありましたけれども、そういうことで間違いありませんね、長官。 ○鈴木政府参考人 お答えいたします。 任意の質問権でありますので、権限の拡大と言えるかどうかわかりませんが、ただ、その対象が船舶上にある乗組員、旅客に今限定されておるのを陸上の関係者にも広げるということで、質問権の対象の明確化を図ったというものでございます。 ○穀田委員 では、二つ目に、任務、所掌事務規定の追加について聞きます。 本改正案では、第二条、海上保安庁の任務、並びに第五条、所掌事務に「海上における船舶の航行の秩序」を追加し、第五条、所掌事務に「海上における犯罪の予防及び鎮圧」を追加している。 これまでも海上保安庁は領海警備業務に取り組んでいます。今回の改正によって新たな任務、所掌事務を追加するというよりも、現在行っている領海警備業務を、法文上明確に位置づけたという説明を受けましたが、それで間違いありませんね。 ○鈴木政府参考人 お答えいたします。 御質問のとおり、現在、領海警備の任務や所掌事務が保安庁にないということではありませんで、法文上、正面から「船舶の航行の秩序の維持」というような規定を置くことによって、そういう業務を正面業務として明確化したものと考えております。 ○穀田委員 では、領海等における外国船舶の航行の法律の関係についても一つ聞いておきます。 二〇〇八年に制定された現行法では、正当な理由がない停留、錨泊、徘回等の行為を禁止し、違反が疑われる場合、立入検査を行い、エンジントラブルなどの正当な理由がないことを確認した上で退去を命じることになっています。 本改正案では、立入検査を行うまでもなく違反が明らかな場合には、立入検査を省略し、勧告を経て退去を命じることができるようにする。このように変更するのは、安全と迅速な処理が主な目的だという説明でありましたが、それも間違いありませんね。 ○鈴木政府参考人 お答えいたします。 委員御指摘のとおり、現行法では、立入検査を行って、やむを得ない理由があるかどうかを確認した上で退去を命ずることとしておりましたが、荒天やあるいは相手方船舶が多数であること等により立入検査が困難な場合に、正当な理由がないことが明らかな場合には、勧告を行った上で退去を命ずることができるということで、円滑な法執行を可能とするための改正でございます。 ○穀田委員 今、長官から、三つの法文上の問題について答弁がありましたように、運用をスムーズにする、それから、現在行っている領海警備業務を明確にするということで、行政警察権限の拡充は極めて限定的なものだということが言えます。 二〇一〇年の十二月に海上警察権のあり方に関する有識者会議が設置され、領海警備に当たる海上保安庁の権限や体制の見直しの検討が行われました。この有識者会議の意見をもとに、二〇一一年一月に発表された海上警察権のあり方に関する検討の国土交通大臣基本方針では、海上保安庁の行政警察権限を拡充する方針が盛り込まれました。議論の中では、海上保安庁により強力な権限を与えるという意見もあったようだけれども、検討の結果、慎重な対応が必要であるということで、今回の改正に大幅な権限拡充が盛り込まれなかったのは、この法案で事実であります。 私たちがこういう問題を考える場合に、お互いに、力に力で対抗するという方向ではかえって緊張も高まって、東シナ海を平和の海にするということに逆行すると私は考えます。結局、周辺海域で生活し、操業する漁業者の安全が脅かされる。平和的話し合いの努力が大切だというのが我々の立場であります。 そこで、本法の改正案の直接の契機となったのは、中国漁船の衝突事件であります。 尖閣諸島に対する日本の領有権は歴史的にも国際法上も明確であります。同時に、尖閣諸島の領有をめぐって日中間での見解の相違が存在することは事実です。 大事なことは、二〇〇六年以来の日中首脳間における累次の共同声明の内容、すなわち、ともに努力をして東シナ海を平和・協力・友好の海とするという合意に基づいて、トラブルが起こっても政治問題にすることを戒め、実務的な解決のルールにのせ、話し合いで平和的に解決していこうとする姿勢が重要だと思いますけれども、その点についての大臣の認識を伺いたい。 ○羽田国務大臣 先ほど富田委員の御質問にもお答えをさせていただいたんですけれども、海上保安庁として、長官級の多国間会合である北太平洋海上保安フォーラムやアジア海上保安機関長官級会合に中国とともに参画をさせていただいておりまして、アジア周辺海域における地域連携を深めているところであります。 さらに、昨年十二月の日中首脳会談において立ち上げが合意され、本年五月に第一回会合が開催されました日中の高級事務レベル海洋協議についても、外務省を初めとする関係省庁とともに、積極的に参加をさせていただいているところであります。 今後とも、これらの枠組みにおける対話、連携の取り組みを通じて、互いの信頼関係の醸成と連携強化を図りながら、平和・協力・友好の海を実現できるように努めていきたいと考えております。 ○穀田委員 今、対話、連携を強め、そして平和・協力・友好の海にしようという基本的立場は同様であると。 そこで、日中高級事務レベル海洋協議、これは先ほど来報告がありましたように、相互信頼を増進し、協力を強化する、さらには重層的な危機管理メカニズムの構築ということが言われております。 そこで、外務省にお聞きしますけれども、日中それぞれでどういった省庁が参加しているのか、明確に願いたい。 ○中野大臣政務官 お答え申し上げます。 日本側は、内閣官房の中の総合海洋政策本部、そして外務省、文科省、水産庁、資源エネルギー庁、国交省、気象庁、海上保安庁及び防衛省でございます。 中国側は、外交部、国防部、公安部、交通運輸部、農業部、国家能源局、国家海洋局及び総参謀部でございます。 ○穀田委員 今お話があったように、カウンターパートである、そういう海に関する関係者が全部参加しているということですね。 それで、先ほども述べましたけれども、外務省の協議に関する概要ペーパーによると、両国間の海洋に関する重層的な危機管理メカニズムの探求を図るとあります。重層的な危機管理メカニズムとは具体的にどういうことを念頭に置いているのか、お聞きします。 ○中野大臣政務官 お答えいたします。 重層的危機管理メカニズムというのは、先ほど来委員が御指摘の日中高級事務レベル海洋協議等の場で、継続的にこういう協議を実施しながら、日中両国の海洋関係部門が定期的に会合をしていく、そして交流を行うことで両国の海洋関係部門間の相互信頼を増進させ、協力を強化させるということでございます。 ○穀田委員 具体的なことは余りなかったですけれども、要するに、継続的で、しかも相互信頼を深めるということを目的にしながら一つ一つやっている、こういうことですな。 報道によりますと、中国の国家海洋局が、日中の海上警備当局間での連絡を密にし、尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件のような不測の事態を回避することを狙いとして、海上保安庁との連携を呼びかけたと言われています。そして、中国海監総隊と日本の海上保安庁とのホットラインの確立、現場での相互連絡体制の整備を想定しているということでありますが、海上警備当局での連絡体制の整備も協議されているのかどうか、あるいは今後協議していく考えはあるのか。これは長官の方にお聞きします。 ○鈴木政府参考人 お答えいたします。 先ほど御答弁ありました日中高級事務レベル海洋協議では、多数の関係機関が集まって協議を行うという場でございますけれども、その中で、国家海洋局と私どもが直接ホットラインを敷いて何かやろうというような提案は、今のところ承知をしておりません。 ○穀田委員 というと、この新聞報道でいうと、中国側が日本の海上保安庁とホットラインの確立だとか、現場での相互連絡体制の整備を想定しているという記事が出ているんですけれども、それは今のところないと。 問題は、先ほど私も、日中双方間における重層的な危機管理メカニズム、重層的なというところに非常に意味があると思うんですね。単なる一つの線じゃなくて、現場、それからさまざまな、相手の方も非常に縦割りはきついところですから、そういう意味でいいますと、どれほど重層的で、しかも密度の濃いやり方、先ほど外務省からありましたように、相互信頼を醸成しながらということになるかと思うんですね。 そういう意味でいうと、双方の警備当局間における連絡体制の整備というのは極めて大事かと思うんです。相手から来ていないということはよくわかりましたけれども、うちの側から、そういう報道があることについて呼びかけていったり、そうしようじゃないかということが必要かと思いますが、いかがですか。 ○鈴木政府参考人 お答えいたします。 実は、中国側はいろいろ所管が分かれておりまして、先ほども御説明しましたように、例えば交通運輸部の海事局というのは海難救助を担当しておりますけれども、これは実際に現場で、共同で海難救助に当たる必要がありますので、我々もコンタクトがありますし、今、サーチ・アンド・レスキュー、捜索・救助協定も取り決めようということで動いております。 したがって、相手の機関に応じてその難易度がありますが、またいろいろと検討してまいりたいと思っております。 ○穀田委員 先ほどありました、相手が機能で区分されているという問題はお互いわかっているわけですけれども、問題は、その重層的なメカニズムということについて、そういう重層的な対話を重視して、平和・協力・友好の海を築く努力が必要だという点については海上保安庁も同じ認識ですね。 ○鈴木政府参考人 総論として、私どももそういう認識は持っております。 ただ、具体的な事例として、中国国家海洋局の海監という船は領海侵犯もいたしておりますし、それから、農業部漁業局の漁政という船も尖閣のところにやってきておるということで、そういう対応を見ながら、今後いろいろ考えていくべき問題だと思っております。 ○穀田委員 重層的な対話を否定するところはないと思うんですよね。ただ、相手の問題はいろいろあって、どこにやるかという問題はあるんですが、報道を先ほど述べたように、そういう呼びかけもあろうかと思いますから、私は、今後、やはり海上警備当局間でのそういうことも必要かと思います。 もう一点、こういう問題を考える際に大事なことは、そこに住む住民の視点で考えるということだと思います。 尖閣諸島を含む先島諸島は、昔から、台湾と大陸、人や物が盛んに往来してきたところであります。海は交流の場でした。与那国町は、歴史的につながりの深い台湾の花蓮市との姉妹都市を結び、子供たちの修学旅行やホームステイを通じて、国境を越えたユニークな交流を進めていると言われています。尖閣諸島をめぐる問題がこうした交流に水を差すものになっては本末転倒です。漁民の方々が求めているのも、安心して操業ができるようにしてほしいということであって、緊張を高めることはしてほしくないと話しています。 国と国との問題であると同時に、そこに住む住民にとってどうなのかという視点が大事ではないかと思いますが、大臣の認識をお聞きします。 ○羽田国務大臣 私は、政府の一員として、尖閣諸島周辺の平穏かつ安定的な維持及び管理の継続のために、国土交通大臣の使命を全うしていく、こういうことが重要だというふうに考えております。 船舶の航行安全の確保等にしっかりと努めていきたいと思っております。 ○穀田委員 最近も、尖閣遭難事件の慰霊祭を開催することを目的とした魚釣島への上陸が問題になっていますけれども、遺族会の慶田城会長は、右翼団体の、領土を守るという考え方には同意できない、遺族会の名前を活動に使われても困ると述べています。私たちはこの指摘を重く受けとめるべきだと考えます。 新崎盛暉氏は、日本と中国の国家間で、互いに尖閣諸島を自分の領土だと主張しているが、そこに住む住民にとって誰の生活圏かを考えることが重要で、周辺の人々によって、歴史的、文化的にどのような生活圏であったかを共同研究することが必要ではないかと指摘し、国境を越え、民衆交流が大切であると主張しています。私は、これは非常に大事な指摘だと思うんですね。 今現場がどうなっているか、また、どんな形で歴史があるかという重みを踏まえて、住民の立場から接近する、交流から接近するということが改めて大事じゃないかと思うんですが、大臣の感想をお聞きしたいと思います。 ○羽田国務大臣 今言われたことは、ある程度理解はできるわけでありますけれども、やはり、平穏かつ安定的な維持及び管理というのが大変重要だというふうに思っておりまして、あらぬ争いというか、わざわざ争う必要はないというふうに思いますので、そういう意味では、平穏かつ安定的な維持及び管理を継続していくということが大変重要だというふうに考えております。 ○穀田委員 何でこんなことを言っているかというと、平穏、安定的な管理というけれども、問われるのは、それは誰にとってなのかなんですね。住民であって、漁民であって、そこに住む人たちがそれを享受しなければならないわけですよ。 その人たちが営々と築いてきた経験や教訓、そしてそのありようを踏まえて、それをしっかりやるということが大きな流れになっていくんだ、それがまた基礎であるということを改めて申し上げて、質問を終わります。 |
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