国会会議録

【第183通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2013年4月3日)



○穀田委員 三月十五日、当委員会での続きを少ししたいと思います。

 まず、笹子トンネル事故について再度聞きたいと思います。

 結局のところ、笹子トンネルの事故の原因は何だったのかということについて、端的に御報告いただきたいと思います。

○赤澤大臣政務官 今回の笹子トンネルの事故により犠牲となられた九名の方々に対し改めて哀悼の意をささげるとともに、負傷、被害を受けた方々に心からお見舞いを申し上げます。

 さて、穀田委員からのお尋ねでございますが、笹子トンネル天井板落下の原因究明と再発防止策について、調査・検討委員会において、幅広い技術的知見に基づき議論していただいているところでございます。

 これまでの議論では、天井板の落下原因について、一番、トンネル完成当初から、ボルト接着部周りに要因が内在していたこと、二番、経年的な影響を受けて天井板が落下に至ったことが指摘されたと理解しておりますが、さらに分析を進める必要があると考えております。また委員会からは、三番目として、中日本高速の点検体制も不十分と指摘されており、問題があったと認識しております。

 国交省としては、委員会の取りまとめを早急に行い、二度とこのような事故を起こさないよう、原因究明に努めるとともに再発防止に取り組んでまいります。

○穀田委員 三月十五日、私は当委員会において、今、赤澤政務官がおっしゃったように、三番目のところでありましたけれども、維持補修費をふやさずに、収益を優先させるために笹子トンネルの改修を後回しにしたんじゃないかということ、そして、中日本の責任は極めて重大だ、その背景に、道路公団民営化に伴って、改修、更新の費用を三割減としたのがもともとの発端ではないか、こういうことを指摘したわけであります。

 今ありましたように、もともとの施工のときから不十分だったんじゃないかというふうなことなど、報告を見ますといろいろなことが書かれています。それから接着剤の問題も含めて、当時の考え方だとか含めて書かれています。そういう意味では、全体として極めてずさんだったということが言えると思うんですね。

 いつもこういうのがありますと、事故原因を究明し、再発防止に努めます。これは大体、慣用句であってはならぬわけですよね。そこで、この事故報告、原因を受けて、国交省はどのように対応しているのか。ボルトで定着というやり方をしていると思われる高速自動車会社ないしは当該する自治体へはどのような指導を行って、どういう回答を得ているのか報告されたい。

○赤澤大臣政務官 国土交通省としては、調査・検討委員会の指摘を踏まえて、道路管理者ということで、各地方整備局等及び各高速道路会社に対し、笹子トンネルと同様の構造を有する既存の天井板については、今から申し上げます対策を実施するよう指示をしたところでございます。

 具体的には、まず、各種影響などを勘案しつつ、可能な限り撤去することでございます。二番目として、やむを得ず存置する場合には、バックアップ構造・部材を設置すること、さらにモニタリングの強化とともに、速やかにサンプリングを行い、実際に引っ張ってみて、これは引っ張り載荷試験と言うようですけれども、それを実施することなどでございます。

 あわせて、委員御指摘の地方公共団体に対しても、当該内容について情報提供し、対応を求めているところでございます。

○穀田委員 トンネル事故を受けて、今、地方自治体の対策はどのように進行しているかをお聞きしたいと思うんです。

 国交省が先日実施したとされている自治体へのアンケートでは、五八%の市区町村が、笹子トンネルの事故の前までトンネルの点検を一度も行っていなかったと発表されています。笹子トンネルの事故以後はどうなっているのか、お聞きしたいと思います。

○前川政府参考人 お答え申し上げます。

 全国の市区町村のうち、トンネルを有する市区町村が六百九十二団体ございます。このうち、笹子事故の前に点検をやっていなかったのは、委員おっしゃるとおり、約六割の市区町村で点検を実施していなかったという報告を受けております。

 なお、笹子トンネルの事故を受けて初めてトンネルの点検を実施したという市町村が百七十四市町村、二六%ございまして、残る三五%の市町村については、笹子トンネルの事故を受けてなおかつ点検を実施していないというふうに伺っているところでございます。

○穀田委員 今、報告がありました。その数字を引き算すると、結局、二百二十八の市区町村がやっていないということになりますよね。私は、これは極めて大事だと思うんですよね。終わってからもやっていない。事故防止やトンネル等の老朽化対策が不十分であるという実態がまさに浮き彫りになった。

 そして、事は人の命と安全にかかわる重大問題なのに、なぜこのような実態が放置されているのかということについて、できれば大臣にお答えいただきたいと思います。

○太田国務大臣 今まで、トンネル等について、危ないとかそういう意識がなかなかなかったんだというふうに私は思います。さまざまなことでメンテナンスが必要だ、今までも、山陽であったり、ことしに入ってから意識がされていたということもありまして、モルタルが天井から落ちたとか。今までは、モルタルが落ちたぐらいでは報告もされてこなかったということがあったと思います。

 穀田先生おっしゃるとおり、ここは点検を急がなくてはならない。緊急点検をし、緊急の対策をすべきところはやらなくてはいけないということなんですが、点検しなさい、こういうふうに言っても、今度は点検する職員が、特に小さい市町村であればあるほど、老朽化していて、いつこれがつくられたかというような履歴もない、データもない、図面もないというようなことが結構多くて、そこのトンネルや橋が特に地方自治体で放置されてきて、危ないということが指摘されるというふうになりました。

 私は、今直ちにこれをやらなくてはいけないというふうに言い、緊急点検を六月まで、そして全部のいわゆる集中点検というのをこの一年間、しっかりした修繕対策というもの、緊急はもっと早いんですけれども、そういうサイクルをつくるというのに、その後展開してPDCAサイクルを回すということに持っていきたいと思っていますが、地方自治体で、やる手法とか、マニュアルとか、人がいないということがあるものですから、マニュアルを出す。それから人の問題でも、どうすればいいんだというようなことの研修を行ったり、相談窓口をしっかり置いたりというようなことを、今、体制を整えて動き出したところでございます。ここをさらにしっかりやっていかなくちゃいけないと思っています。

○穀田委員 現状はそのとおりだと思うんですね。

 結局、市町村における人手不足といいますか職員不足と、技術系の方々がいないという問題が大体あるということが一つの大きな原因ですよね。もう一つはやはり、大臣は言わなかったんですけれども、お金の問題も実はあるわけですよね。どうしてこれをやるかという場合に、金が要りますから、どうしてもちゅうちょしてしまう。単に調査、点検の費用だけじゃなくて、直さなければならぬという現実が直面しますから、その問題は当然出てくる。

 要は、今ありましたが、督促し、体制をとるということはそのとおりだと思うんですけれども、国として、今こういう実態、地方自治体におけるそういう現状を踏まえて、どういう支援策、単に点検し、内の体制を整える、国交省の内側の体制を整えるのはそれは当然でしょうけれども、どんなふうにしてその支援対策をとろうとしておられますか。

○太田国務大臣 例えば予算の面でいいますと、国交省の公共事業予算が、補正予算で一・八兆円です。例年は、防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、こういうことに使われる予算というのはほとんどなかったんですが、これについて、一・八兆のうち、防災・減災、老朽化対策にと言ったのが、一・二兆円ということになったのが先般の補正予算でございました。約六五%がそうした防災・減災、メンテナンスも含めた、点検も含めた予算になっています。

 今審議をいただいております本予算の中では、大体四七%ぐらいが防災・減災、老朽化対策。

 その中には、予算面として、打音をするとか、点検をするとか、目視というようなこともある、あるいはまた防災の教育というようなことも含めて、今まで予算組みがなされていなかったんですが、その部分についてもしっかりやるように、そこに予算をつけたというのが、ことしの両予算の大きな特徴であるというふうに思っているところです。

○穀田委員 予算の問題について出ました。では、そちらの方に話を進めます。

 今大臣から補正予算の話がありました。いずれにしても、その中でも実は老朽化対策は幾らあるのかということについて、大臣は、老朽化対策、防災・減災と丸めて言っていますから、では、補正予算の中で老朽化対策は幾らかと聞くと、公共事業全体の予算の四分の一、こう言っているんですよね。ですから、そんなに褒められたものでもないんです。何か、防災・減災含めて、ぼこっと言うと多く聞こえますけれども、そこは言っておきたいと思うんです。

 問題はそこですから、せっかく出ましたので、笹子トンネルの事故を通じて、社会資本の老朽化が大変な事態になっているということが明らかになった。そして、その対策は喫緊の課題であるということがはっきりしたと私は思うんですが、大臣の認識を簡単に問いたいと思います。

○太田国務大臣 老朽化対策ということで、改めて一九八〇年代のアメリカが、ニューディール政策をとった五十年後ということで、橋が落ちたり道路が陥没したりという荒廃するアメリカという現象が、全く同じように今起きています。

 一九七〇年代に、日本の例えば橋梁をとりますと、一年間で一万橋ずつつくられるというようなことだったんですが、それがずっと、どんどん減ってきまして、今は百とか百五十という規模の橋をつくるということになっています。それは、大きな山がずっとあって、今一番底のところに来て、また再び、メンテナンスあるいは修繕、老朽化対策の山場がこれから来るということです。

 ですから、そこをどういうふうに予算組みもしながら、防災・減災、老朽化対策、そして特に構造物の長寿命化というものを図っていくか。ここのところは、極めて私は、これをやればここのお金がすごいし、しかし日本のこれからのことを考えると、そうしたことだけでなくて、地震ということについて対策をするということは老朽化ではありませんから、新しいものも設定しなくてはいけないということになったり、国際競争力の中で都市間の競争というのが激しくなって、勝ち抜かなくちゃいけないということからいきますと、新型の都市をこれからどうつくり上げて、強い都市をつくっていくかという課題もあったりする。

 そういうことで、穀田先生、まさにこの防災・減災、老朽化対策、長寿命化ということが非常に大事という中で、どういうふうにこれをやるかという長期的な全体的なフレームワーク、そして規模をどうするかということは、まだ私、全部見据えておりませんけれども、極めて重要な課題だということで、勉強をしっかりしなくちゃいかぬというふうに思っているところです。

○穀田委員 前半の方は、私、去年の三月に予算委員会で、新しい山が来ると。その点は認識は一致した。後半の方になってきますと、ちょっと話が違ってきますけれども。

 そこで、どんなふうにお金が要るかという問題が一つ鍵だと思うんですね。そこで、老朽化対策というのはどのぐらいかかるか、特に維持管理、更新費用はこれから当然増大するわけで、どの程度必要かということなんですね。私は昨年、予算委員会でただしました。そのときに、国交省所管の更新費だけで百九十兆円と試算されている。これは国交省の文書にも書いてある。問題は、その試算に高速道路などは入っていないわけですね。

 私は、ことしの三月十五日の当委員会で質問して、きょう、またもう一度資料を皆さんにお配りして出させていただきまして、これだけ、五倍になっているんだったらふやす必要があると、大臣がこの間おっしゃっていました。そこで、NEXCOの三社の管理する高速道路における要補修損傷件数が五年間で五倍になっているのに、維持補修費はほぼ横ばいということを言ったわけですね。これはまさに、こういった問題の老朽化対策を軽視し、後回しにしている実態だと思うんです。

 そこで、首都高、阪神高速、NEXCOの高速道路の維持補修費は、今後幾ら必要と推計しているんですか。

○前川政府参考人 お答え申し上げます。

 高速道路会社が六社ございますが、高速道路機構と締結している協定によりますと、二十五年度単年度では、計画管理費、これは維持管理費と業務管理費を含んでおりますが、約六千億円、修繕費が約四千億円となってございます。

 このうち維持補修、修繕にかかわるものということで申し上げますと、二十五年度から六十二年度までの協定の締結期間内に、修繕費トータルで約八兆円が必要ということで協定の中に組み込ませていただいております。

○穀田委員 全体としては八兆円ということで、去年も言っているんですけれども、そこで、先ほど大臣は、どうしてお金を出していくかということを含めて、これから詰めて、いろいろな御意見も聞きながらという意味なんでしょうけれども、勉強されるとおっしゃっていました。

 そうしますと、維持管理、更新費用が巨額になるということは大体お互い一致しているわけですね。そこで、〇九年度版の国土交通白書で、新規建設を今までどおりの水準で対応した場合、二十五年後の二〇三七年には、維持管理、建てかえ費用さえ賄うことができないと指摘しているわけですね、大まかに言うと。だから、新規の大型公共事業などを進める予算的余裕はないんじゃないか、思い切って減らさなければならないんじゃないかと私は思うんです。その辺はいかがですか。

○太田国務大臣 これは、国土交通白書で百九十兆円ということがここでよく出てきているわけですが、私から見ますと、この白書はかなり前提というものがいろいろありまして、この数字が、百九十兆というのがひとり歩きするのは、基本的にざっくり言いますと、五十年で全部壊れるから、全部つくり直すということの合計が百九十兆というようなことに近い数字であるというふうに思っています。

 そういう意味からいきますと、私は、修理、修繕というのは当然やらなくてはいけない、長寿命化は大事だというふうに思っていますが、しかし、それも、さっき申し上げましたような山が必ず来ます。しかし、山が来るというときに、私は、技術というものの向上を一気にさせるという中で、相当これは山が低くなってくる。

 土木工学科はシビルエンジニアリングという学問で、今は、シビルエンジニアリングどころか、土木なんていうと格好悪いということで、地球環境学科なんていって、私の後輩のところは違う名前になったりして残念に思っていますけれども、シビルエンジニアリング、つくり上げる工学というものについては世界的にあったんですが、メンテナンスエンジニアリングというような学問が日本から発出して、それで技術水準を上げて、そして三十年、四十年後には国々が同じようになるときに一番すぐれている技術が輸出できるような、私は、そういうようなメンテナンスエンジニアリングということをやると同時に、長寿命化を図って、それで、山を低くしながら長くいくというようなメンテナンスの方向に持っていかないとこの国はうまくいかない、こう思っていますから、そういうところにスタートを切りたい、こういうように思っています。

○穀田委員 ただ、この白書を含めて、それは次の山が来ると、もっと大きくなるという見込みもあるんですよ。しかも、これは更新費だけでありまして、維持費を含めると三百四十兆になるということを含めますと、そう低目に見積もってはならないというふうに私は思っています。

 だから、政府の財政審議会も、「維持管理に多額の経費がかかることも踏まえれば、社会資本ストックの大幅な拡大を指向していくことは困難であり、新規投資を抑制しつつ、既存ストックの有効活用への転換を一段と進めるべきである。」と指摘しているんですね。だから、やはり新規の抑制はしなくちゃならぬというのが、政府は、少なくとも今の予算をつくるときにも言わなければならない事態に直面しているということを指摘しておきたいと思うんです。

 そこで、百九十兆という話が出ましたが、あわせて、私は、新規の事業がどれほどかかるのかということについて質問しておきたいと思っています。

 新設の事業のうち、今事業中ですが、ダム建設で三兆二千四百五十四億円、整備新幹線で三兆七千六百億円、国際コンテナ戦略港湾事業で四千二百億円の巨額に上ります。

 高速道路関係はいつも出ないものですから、この際はっきり聞いておきたいと思うんです。二〇一二年度末の数字で答えてほしい。一つ、新直轄高速道路建設の総額と残事業費。二つ、大都市環状道路の総事業費と残事業費。三つ、高規格幹線道路の総事業費と残事業費。四つ、地域高規格の首都高などの残事業は、それぞれ幾らか。

○前川政府参考人 お答え申し上げます。

 国が直轄で行っている事業中の箇所におきます総事業費、並びに二〇一二年度末時点の残事業費について申し上げます。

 高規格幹線道路については、総事業費約十五兆円、残事業費約七兆円となっております。

 地域高規格道路につきましては、総事業費約七兆円、残事業費約三兆円となっております。

 さらに、お尋ねのございました新直轄方式は、高規格幹線道路の内数となっておりますが、総事業費約四兆円、残事業費約二兆円でございます。

 さらに、大都市圏環状道路も高規格幹線道路の内数となっておりますが、総事業費約七兆円、残事業費約三兆円となっております。

 なお、有料道路分の事業費につきましては、税負担とはなりませんが、お時間をいただければ、整理した上で御報告をさせていただきたいと思っております。

○穀田委員 高規格幹線道路の残事業費というのは、私は、残延長のキロ数と今までつくってきたものを計算すると、大体二十九兆ぐらいかかるという数字なんですね。ですから、今、全体を合わせるともう少し精査をする必要がありますけれども、いずれにしても、約四十兆円ぐらいかかるということだけは確かだと思うんですね。特に、高規格道路も含めて今つくり出す、それから地域高規格もやる。これは、結局のところ、このまま継続したらとてつもない巨額の費用が要るということだけは確かだと私は思うんですよね。

 額の多少の違いはありますよ。でも、今私が言いましたように、ダム、整備新幹線、国際コンテナ戦略港湾、それから、いわゆる全体として丸めて言うと高速道路、これらを含めたら、相当多額な額になる。それをまたつくるということは、その山をつくるということは、またもう一回、次に一定の年限が来ればつくらなければならない、つくり直さなければならない、また山が来る、こういうことになりますね。

 したがって、私は、先ほど交通白書を引用しました、それから財政審議会の指摘も引用しました。ですから、これらを本気になって抑制しないと、幾ら大臣がおっしゃる、メンテナンスエンジニアリングと言ったとしても、費用は幾らその問題について縮小することができたとしても、多額の費用が要ることにかける予算的余裕はないということだけは言っておかなければならないと思うんです。したがって、それは抑制しつつ、本当の意味で老朽化対策、維持管理、補修というものについて全力を挙げるという形での政策転換をしなければならないということを述べて、きょうは質問を終わります。