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【第183通常国会】 衆議院・国土交通委員会 ○穀田委員 質問します。 不動産特定共同事業法というのは、一九九四年に制定されました。当時、不動産流通や不動産投資をめぐってどのような問題があって法律を制定したのか、なぜ事業を許可制としているのか、この根本についてまず大臣にお話しいただきたいと思います。 ○太田国務大臣 投資家から出資を受けて不動産取引を行って、その収益を投資家に分配する事業というのは、昭和六十二年ごろ、一九八七年ごろから行われていたようでございます。これが平成三年ごろに、経営基盤の脆弱な事業者が倒産をしまして、投資家の資金が回収できなくなるといった深刻な被害が発生しました。九一年ということになります。そのため、投資家保護を図ることを目的に、平成六年に不動産特定共同事業法が制定されました。 この法律では、投資家から出資を受けて不動産取引を行うような事業者につきまして、十分な財産的規模を有することや一定の資格者を配置することなどの要件を満たした者に限るということといたしました。このため、許可制を導入するということにしたものでございます。 ○穀田委員 なぜ九一年にそういうことが起こったのかというのがもう一つ言われませんでしたけれども、やはりあれはバブル崩壊で起こったということが一つの大きな事象でしたよね。ですから、私は、今の考え方の根本にもう一つ、多くの方々からも質問されましたけれども、不動産を投機の対象としていいのかという根本が今問われているんじゃないかと思うんですね。 先ほどの話、説明を聞いていると、四十兆だ何十兆だといって、もうバラ色に描くわけですよね。大体、政府が物事を規制緩和してバラ色に描いたときは何が起こったかという、今までの歴史の反省をしなくちゃならぬというふうに私は特に思っているものですから、そういう角度で私が物を言っているということをまず知ってほしいと思います。 現行法では、資本金一億円以上など、一定の厳しい許可要件を確かに設けています。それで、大手不動産会社に限って事業を認めている。許可を受けた不動産会社は、みずからの責任で開発を行い、利益を投資家に分配する。ところが、改正案ではこの規制を緩和し、一定の要件を満たす特別目的会社、SPCについては届け出のみで事業を行うことを認める。なぜ許可制から届け出制に規制を緩和するのか、この点についてもお聞きしたいと思います。 ○鶴保副大臣 先ほど来、御答弁申し上げておりますが、これまで、現行の不動産特定共同事業の仕組みでは、投資家の収益が投資対象不動産のみならず、他の事業からも影響を受けるため、投資家にとって使いづらくなっておりました。このことを避けるためということでございますが、具体的には、SPCにおきましても、委員御懸念のような、届け出制にしたという規制緩和ではありますけれども、これは器というふうに御理解をいただきたいと思います。 そのSPCに対して、業務の全てを委託する不動産特定共同事業者におきましては、これらを許可制とさせていただき、御指摘の投機的取引の抑制等々についても、これらについては指導させていただくという方針で臨みたいというふうに考えております。 ○穀田委員 もう少しくっきり言ってください。聞こえないんです。マイクをうまく使っていただいてと思います。 ただ、私、先ほど来ずっと話を聞いていると、このやり方の問題の中心は、何を目的にしているかというと、局長から答弁があったように、収益性に常に着目しているんですよね。それを何回言っても、常にそれはあるんですよ。だから、そこに大きな問題がある。 そうすると、まちづくりなんかの場合に、収益性が目的でいいのかということになってしまうんですよね。だから、このようなやり方をしなければならないのかというのは疑問だと私は考えます。そして、公共的な部門が一定の予算を出して、住民の意思を入れてやれば済むことだと思います。ですから、このやり方でいけば、無責任な開発事業が進み、投資家被害が生じることになるんじゃないかと危惧せざるを得ません。 SPCは、特例事業を行うといってもペーパーカンパニーで、実際の開発事業や不動産の取引、販売勧誘は委託する。倒産隔離されてプロ投資家にメリットがあるように言うけれども、事業をする側にとっては責任が軽くなり、リスクは投資家に負わせることができる。大手不動産やディベロッパーに非常に恩恵の大きい改正だと私は考えます。 そこで、法改正によって耐震化や老朽不動産の再生へ民間資金が入ると言うけれども、今回導入される倒産隔離のスキームの対象になるのは中古不動産だけか、それとも新規建設も対象になるのか、簡単にお答えいただきたい。 ○佐々木政府参考人 お答えいたします。 今回の改正スキームは、建築物の耐震化や、あるいは老朽化した建築物の再生、こういったこともございますし、あるいは遊休土地等の不動産の有効活用を図る、こういったこともございます。 したがいまして、こういった法改正の趣旨に鑑みましても、この改正後の仕組みの対象となるのは、必ずしも中古の建築物の再生ということに限らず、遊休地などを活用した新規建設、こういったものも対象になるものと考えております。 ○穀田委員 先ほど来の話を聞いていても、何か、すぐ耐震化だとかそういう施設の話をするんだけれども、やはり新規事業も含めて対象になるということは明らかであって、やはり、その意味でいうと、大手不動産だとかディベロッパーが好き勝手できるようになるということ自身については私はあると思うんですね。 といいますのは、今、法律の第一条、目的によれば、「この法律は、不動産特定共同事業を営む者について許可制度を実施して、その業務の遂行に当たっての責務等を明らかにし、及び事業参加者が受けることのある損害を防止するため必要な措置を講ずることにより、その業務の適正な運営を確保し、もって事業参加者の利益の保護を図るとともに、」となっているわけですから。現行の事業については、仕組みからして再生には向かないということだと思うんですけれども。 そこで、今回新たに追加される特例事業というのは、リスクが高いから投資できるのはプロ投資家に限られるということになっています。プロの投資家といっても、はっきり言うと、大手の、大銀行や投資信託銀行だとかいって、それらがプロの投資家なわけです。 二月に成立した補正予算によって、耐震や省エネ性能にすぐれたビル改修や建設に出資する官民ファンドが設立されました。このファンドの投資も受け入れることができるわけですね。 〔委員長退席、西村(明)委員長代理着席〕 ○佐々木政府参考人 お答えいたします。 ただいまお話のありました、補正予算で創設いたしました耐震・環境不動産形成促進事業は、国が民間投資の呼び水となる資金供給を行うことによりまして、民間資金やノウハウを活用いたしまして、耐震・環境性能を有する良質な不動産の形成を促進し、地域の再生、活性化に資するまちづくりを推進しようというものでございまして、この事業の趣旨は、まさに今回の法改正の趣旨と軌を一にしていると考えております。 したがいまして、今、委員御指摘がありましたように、改正後の不動産特定共同事業法による特例事業者、いわゆるSPCにこのファンドを位置づけるという方向で検討したいと考えております。 ○穀田委員 それで、今皆さんにお渡しした資料の一ページ目にそれが載っています。 官民ファンドには、国交省から三百億円、環境省から五十億円、合計三百五十億円の税金がつぎ込まれました。民間投資の呼び水となるリスクマネーを供給するということで、改修、建てかえしたらぴかぴかになってREITに売却できる、これがその図ですよね。そして、大手不動産やディベロッパーや金融機関がもうけることができる。簡単に言えば、特定企業のもうけのためにこういう税金をつぎ込むことになるということは明らかであります。 問題は、結局、誰のための規制緩和なのかということなんですよ。 二〇一〇年四月、不動産証券化協会は、成長戦略としての大都市の再生・地域活性化に関する提言、民間資金等の活用促進策というものを行っています。その中で、不動産特定共同事業法に倒産隔離型のスキームを新たに創設することを求めています。提言の全体は、不動産投資市場を通じて、不動産二千三百兆円と民間資金、その中には個人金融資産千四百兆円と機関投資家等、いわゆる銀行、保険、さっき言った年金だとかありますよね、それを循環させる不動産証券化を一層強化することによって、大都市の再生と地域活性化、あわせて国際競争力の回復が実現し、我が国の成長を牽引していくもの、こう書いています。これが資料の二ページ目に書いているもので、ぐるっと回っていくということが書いているわけですよね。 都市再生だとか地域活性化を掲げているけれども、結局、今回の改正で最も利益を得るのは誰か。同協会の主要メンバーである大手不動産、ディベロッパー、銀行や証券など金融機関、投資会社、ゼネコンなど、大企業じゃないのかということを私は考えるんですが、いかがですか。 ○太田国務大臣 これは、大企業だけがもうかるとか、そういうお話ではないという認識をしております。 今回の改正は、遊休地の有効活用や老朽化した建築物の再生を促進することによって、建築物の耐震化、老朽化対策や都市の再生、地域活性化などに資するという極めて重要なものだと思いますが、それはそのまま大企業がもうかるというよりは、その町にとって重要であるということだと思います。 また、事業者は、企業自体の信用力ではなくて、プロジェクトごとの優良性、収益性によって、建てかえ等を行うための資金調達を行うことが可能、こういうシステムになっているということからいきますと、投資家にとって、これはいいということにもなります。 そして、自社の信用力だけでは資金調達の難しい場合が多い、これは大きいところというよりも、地方の中小ディベロッパーにとりましても、こうした建てかえ等については仕事ができるということも含めて、地方の中小ディベロッパーにとってもメリットがある。こう考えますから、そういう点では、これは大企業だけがもうかるんだとかいうお話ではないというふうに思っております。 〔西村(明)委員長代理退席、委員長着席〕 ○穀田委員 この仕組みがなくても別に開発はできるということを言っているわけです。 この仕掛けを提起したのは、今、四ページ目ですか、この資料にありますように、筆頭は不動産証券化協会の関係者、三井不動産からずらっと並んでいる、こういう人たちがこの内容を提起したということは事実であります。 そして、法改正によって、国交省が資料で出しました不動産証券化実績の推移にありますように、年間千八百億円の事業実績が五千億円にふえると試算をしています。これほどの額の大幅増の中心になるのは、大企業であることは明らかであります。もちろん、地方で必要な耐震化や建てかえ事業を行うことに対して言うならば、私は、まちづくりの計画に位置づけて、国も地方自治体も協力して進めればよいと考えるわけであります。 問題は、今言いましたように、不動産証券化協会の提言を受けて、当時の民主党政権は不動産投資市場戦略会議を設置し、八回にわたって、不動産ファイナンス協議会、不動産証券化協会、森ビル、三菱地所その他投信会社などからヒアリングをしています。同年十二月、報告書を取りまとめましたけれども、その内容は、今述べた、不動産証券化協会の提言に沿ったものになっています。そして、昨年、通常国会に不動産特定事業法改正案を提出した。衆議院解散で廃案になったけれども、政権復帰した自公政権が改めて今通常国会に改正案を提出した。こういう経過になっているんですね。 だから、よくよく見ると、その中身がどういう内容で、しかもどういう形で行われてきたかという経過を見ますと、一目瞭然なんですよ。したがって、その内容、大臣は一生懸命、中小企業、中小企業と言っていますけれども、大手ディベロッパーの意見ばかり聞いていたんじゃないのか、こんなやり方でいいのかということについて、いかがですか。 ○鶴保副大臣 今回の法改正に当たっては、有識者や関連業界などから幅広く意見を聞かせていただいております。 具体的には、平成十九年五月の社会資本整備審議会第二次答申において、不動産投資市場の今後のあり方につき、関係者との対話と自主的な取り組みを促す場を持つことが必要との認識が示されたことを受けて、行政、有識者、金融、不動産等の関係業界から成る不動産投資市場確立フォーラムというものを設立させていただきました。 このフォーラムと、先ほど御指摘の不動産投資市場戦略会議の報告書を踏まえて、中小事業者に対するヒアリングを行いまして、その結果、本法案改正に対する要望が強く、今回の法案改正に至ったものと理解をさせていただいております。 ○穀田委員 おっしゃるように、不動産投資市場戦略会議におけるヒアリング関係者の御意見というのを見ましたけれども、一回から八回までやっていますよ。それを見ますと、少なくとも、東京海上アセットマネジメント投信会社、不動産証券化協会、大阪ガス、東京証券取引所等々、さくら綜合事務所、三菱地所、信託協会、これを見ても、それは少しはそういう方がいるというふうにおっしゃいますけれども、ほとんどはこういう内容になっていて、意見を述べているのはまさに大手事業者ばかりであることは、発行している資料からも明らかなんですよね。 だから、経過を我々が言っているのは、どういう提案が出され、報告書が出されているか、その基礎になっているのは何か、その意見を聞いたのはどこか、この三つの点から私は言っているわけであります。 そこで、経済成長のため不動産投資市場を拡大したら何が起こるか。特に問題なのは投機とバブルなんですよね。土地や建物等の不動産は人々の生活や地域経済の基盤であります。投機の対象とすべきではありません。 ところが、今回の法改正により新たな資金が不動産投資市場に流入し、不動産の価格が投機によって乱高下し、市民生活や経済生活に悪影響を及ぼすおそれがある。今、安倍内閣の異常な金融緩和で、あふれ返ったマネーが不動産投資市場に流れ、不動産価格も上がり始めている。官製バブル、J―REITバブルと呼ばれる様相を呈している。これは「エコノミスト」や、その他の雑誌も報道しております。このようなときに国土交通省が、不動産証券化によるところの不動産投機、バブルに拍車をかけるべきではないと私は考えます。 今回の法改正によって、一定の要件を満たせば誰でも不動産特定共同事業に参入できるということになりますから、投機目的のファンドが参入することも可能になるのではありませんか。 ○佐々木政府参考人 お答えいたします。 一般論でございますけれども、ファンドが事業に参加する方法として幾つかございまして、一つは、ファンド自身がSPCになるということが考えられます。また、そのファンドがSPCを設立する母体になるということが考えられます。しかし、こうした場合には、SPCはあくまでも不動産の保有のみを目的とするものでございまして、実際の売買等は行いません。そういう意味では、三番目に、ファンドが不動産特定共同事業の許可を得て、SPCから業務の委託を受けるという場合が実質的な意味を持つということになるわけでございます。 不動産特定共同事業を行おうとする場合には、これは許可制になっております。また法律上も、投機的取引の抑制に配慮する義務が課せられております。したがいまして、疑わしい取引等があれば、立入検査など必要な監督を行ってまいりたいと思っております。 ○穀田委員 後で幾ら立入検査するなんて言ったって、参入できることは事実なんですよ。 局長は先ほど、経済情勢について、実態があるから土地の値上がりというのはバブルにつながらないというような話をしていましたけれども、そんなことないですよ。今、南青山で長年塩漬けになっていた土地が超高値で落札され、話題になっています。土地の一部を持つ都市再生機構の入札で、落札した不動産会社は村上ファンドで有名な村上氏と関係が深い会社であります。虫食いの土地を異常な高値で購入したのは、周辺を地上げして再開発するつもりだろうとちまたでは言われているわけですね。大体、URがバブルを誘発させるような高額取引を行っていいのかという批判まで起こっているわけであります。 そこで、バブルはなぜ起こったか。元国土庁次官で、その後、参議院議員を務めた清水達雄氏は、一九九四年の著書「バブル現象と土地・住宅政策」、これを持ってきました。ここでこう言っているんですね。国を挙げて民間活力、規制緩和、内需拡大を進め、余った金が土地、不動産に流れ込み、地価上昇、バブルが起こったと述べています。今、安倍政権の経済政策は、うり二つと言わなければなりません。 大臣に聞きたいと思います。 政府は、不動産インフラ投資市場の活性化を強力に進めています。今回の法改正にとどまりません。昨年、当時の民主党政権が日本再生戦略に位置づけ、昨年十二月の不動産・インフラ投資市場活性化方策に関する有識者会議報告で、PPP、PFIの活用、官民ファンドの創設、J―REITの市場の活性化、J―REIT運用資産の多様化などが提言されています。総選挙後、自公政権が復活して、これらの施策をさらに強力に進め、国を挙げて不動産投資市場を拡大しようとしている。 私は、政府が投機やバブルを再燃させていいのか、本来、投機やバブルを抑えるのが政府の仕事じゃないのかというふうに思いますが、いかがですか。 ○太田国務大臣 かなり見解の相違というか誤解があろうかというふうに思いますが、不動産バブルは、実際の不動産の価値にかかわらず、不動産の売却益のみを狙った投機的取引によって資産価格が実体経済以上に高騰してしまうという、そうした状態であると認識しているわけです。 本改正は、遊休地の有効利用や老朽化した建築物の再生を促進するということによって、これは大事なことです、建築物の耐震化、老朽化対策や都市の再生、地域活性化などを図るものである。これによって不動産の収益性を向上させ、それに見合う不動産の価値の向上分を投資家に配分をしていく仕組みでありまして、実体経済を反映した資産価格が実現するということが大事なことだと思っております。 このため、今回の改正におきましては、御指摘のような不動産バブルを生じることはない、このように考えているところでございます。 ○穀田委員 誤解はありません。誤解があるとすると、経済界の多くの方々の半分の方々が、この問題について疑問を持っておられる方が全部誤解しているということになるわけですね。 しかし、歴史はそうではなかったことがはっきりしています。あなた方がやった政策が見事にバブルをもたらし、それが破綻したという歴史的事実を想起しなければなりません。しかも、私は、この清水さんとは明らかに考え方が違いますよ。でも、バブルの時代に次官として行った施策とその反省という点では参考になります。 この方は、我が国では土地の投機的取引が地価の高騰、土地利用の秩序の混乱等、国民生活に大きな弊害を及ぼしてきたことは否定し得ないと述べているんですね。そして、土地基本法、一九八九年ですけれども、「土地は、投機的取引の対象とされてはならない。」ということで、第四条にわざわざ書かれています。 私は、国を挙げて異次元の金融緩和を行って、税金もつぎ込んで、さらに不動産証券化を行って不動産投資市場を拡大する、そして経済成長を図るというやり方を進めれば、必ず不動産投機、バブルが再燃することになるという可能性は否定できないと思っています。 大都市への集中を進め、不動産価格の乱高下で、住民の生活や中小企業に悪影響をもたらすおそれがある。そして、結果として、大手不動産会社やディベロッパーの要求に応えて不動産証券化を拡大し、投機やバブルを再燃させる、そういう本改正案については反対だ。しかも、そのことは必ずや歴史が証明するだろうということを述べて、終わります。 |
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