国会会議録

【第183通常国会】

衆議院・消費者特別委員会
(2013年5月23日)





○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 四人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。

 私は、TPPとの関係で、全員にお聞きしたいと思います。

 私は、さきの当委員会で、TPP交渉参加をめぐって、食品安全の問題などアメリカと事前協議されていることを取り上げました。国民の不安は、TPPで食の安全はどうなるかということであります。幾ら首相が守るべきものは守ると言っても、重要農産物の聖域確保の保証はありません。

 四月十二日のアメリカとの事前協議合意では、アメリカ側の発表文書に日本の重要農産物についての言及は一切ありませんでした。それどころか、米国通商代表部が四月に発表した二〇一三年版外国貿易障壁報告書、これは外国の貿易上の課題の是正を求めるものでありますが、この中で、貿易障壁の一つとして、日本が食品等について成分と食品添加物の名称、割合、製造工程等の表記を求めていることに対して、負担が大きいとして、食の安全性確保のための措置を緩和するように求めています。そして、貿易障壁報告書と同時に発表された衛生植物検疫措置報告書でも、食品添加物の認可手続の迅速化や防カビ剤使用の規制緩和などを求めています。

 以上のような動きは、食品表示の対象拡大、改善を求めている国民、消費者の願いに逆行するものと言わざるを得ません。求められている食品表示がいささか危うい状況になっていると私は感じますが、参考人の皆さんは、TPPとの関係でどのように思われるか、御意見を伺いたいと思います。

○西藤参考人 TPP問題につきましては、日本の交渉参加が決まっているわけでございますけれども、具体的な枠組みについては非常にまだわからないことが多い状況だと思います。

 一般論として申し上げれば、食の安全というのは、先ほど来議論がありますように、基本中の基本だと思っています。ただ、安全についても、いろいろなルールの中で処理されている。だから、コーデックスだけで全部決まるかというと、現状でも、各国の消費の実態なり自然条件の状況に応じて、科学的に説明できる事項については当然そういう実行ができるわけでございます。

 ですから、添加物の実情について、アメリカとの関係、あるいは今度EPA交渉が始まっておりますEUとの関係においても、それぞれ状況の違いがあると思いますが、やはりそれぞれの国での実態を含めて、先ほど来議論があります科学的な検証が食品安全委員会で整理をされ、その整理に乗っかった上で実行されていく事項であって、一方的に何かこうだからこうだということにはならないのではないかというふうに思っております。

○山根参考人 主婦連合会は、TPP参加断固反対を長く表明しております。食の安全、命の大切さのためのルール、消費者の権利を守るための基準等が、経済利益優先のために切り崩されることはあってはならないというふうに強く思っているからです。

 表示の充実と本当に全く相反するもので、消費者の権利を大きく奪うと思ってございますし、食品添加物表示、遺伝子組み換え表示等々、日本には日本の安全、安心の考え方、取り組み、長い食文化、環境、気候等々があるわけでございます。そういったものを世界標準ということで無視をして、経済優先ということで参加をして、安全が脅かされるということはあってはならないというふうに思ってございます。

○鬼武参考人 お答えいたします。

 まず、TPPへの参加についてですが、私どもは、国民への情報提供、食品の安全、安心にかかわる政策、食料自給率向上を目指した施策、必要な制度などが後退することがないような取り組みを、この間、政府に求めてきております。

 その中で、私がお答えできるのが、食品の安全、それの中でまた添加物の話をさせていただきますと、現状、二〇〇三年より、日本は、食品安全基本法、食品衛生法の改正によりまして、リスク評価とリスク管理を分ける、いわゆるリスクアナリシスの枠組みの中で、最初、リスクマネジメントの立場から厚生労働省が食品添加物の使用の資料を集めて、それに基づいて食品安全委員会の方でリスク評価がかかります。そのリスク評価に基づいて今度は厚生労働省の方に返って、基準の必要性、あわせて、現行では消費者庁の方で表示の是非についての議論がされるというふうに理解しております。

 そのような点からしますと、日本は今、現行で食品衛生法、食品安全基本法という二つの健常なる法律のもとに日本の食品の安全性についてはカバーされておるわけですから、まず、そのことが前提であるということが重要であると思います。

 その点からしますと、いまだ表示の部分で、食品の安全の問題について、食品安全委員会がかかわらない分野、先ほど申し上げたアレルゲンの問題でありますとか栄養表示の成分の問題については食品安全委員会はかかわっておりませんので、何度も強調しておりますが、そういうものがリスク評価としてサイエンティフィックなレポートができたら、海外でも、それはSPSであろうとTBTであろうと、そういうものについては証明ができるわけですから、そのことが重要というふうに考えております。

 以上でございます。

○池戸参考人 表示の関係でちょっと申し上げたいと思うんですが、TPPとの関係でいえば、もちろん、先ほどから参考人がお話ししたのと同じで、安全だけじゃなくて安心というのもセットで、これは非常に重要な、国益に関連する問題だと思います。

 法律上も、食料・農業・農村基本法の中にも、表示とは書いていませんが、情報の関係も書いています。それから、先ほど出ました食品安全基本法の中にも、これは一条立てで、安全と表示とは密接な関係がある、そういうところが明記されておりますので、ぜひともそういう観点で守っていただければと、お願いでございます。

○穀田委員 守りたいのはみんな同じなんですよね。

 相手が一方的に来るということも事実で、西藤さんも一方的なという話がありましたけれども、相手の方が一方的に来るということなのかを見ておかないと、これはえらいことになるということだけ言っておきたいと思います。

 そこで、今度は山根参考人にお聞きしたいんですけれども、表示に対するコスト論について少しお聞きしたいと思うんです。

 検討会の報告書では、「コスト上昇を引き起こすおそれがある」「表示切替えに伴うコストが相当なものになる」、こういうふうに記されているんですね。食品業界等からも、表示には膨大なコストがかかるとの心配が提起されています。

 これに対して山根参考人は、例えば、原料原産地表示について、実際の韓国の例を取り上げて、それによれば、単価五百円の商品の場合、これは三十五銭から一円二十五銭内でできると述べられています。すなわち、それほど重い負担ではないとの御意見だと思うんですね。

 表示に対するコスト論について、実態を踏まえて、もう少し詳しくお話しいただければと思います。

○山根参考人 韓国の事例は、調査をした方から情報をいただきまして、一元化検討会の中でも公表してございます。

 韓国でなぜ何百という食品に義務化ができているか。零細事業者は別途配慮が必要だとしても、ある程度の規模の食品事業者でしたら十分可能であるということで、十分機能しているということを一元化検討会の中でも説明をさせていただきました。

 それから、その後も、国内でも、前向きに表示の情報公開に取り組んでいる事業者の方からも、またJAの方等からもいろいろと伺いますと、大幅増というようなことはない、逆に、曖昧な表示で問い合わせを多く受けるというようなことの方が手間暇がかかるといったような回答もいただいてございます。

 こういったように、日本でも幅広く加工食品の原料原産地表示の拡大が可能だということは確かなことだと私は考えてございますし、今回新しく三法が一元化をしまして、新たな視点で、閣議決定もされています拡大のあり方というのが、今後きちんと議論をして方向性が決まっていくと思いますので、見守っていきたいというふうに思っております。

○穀田委員 最後に、皆さんに、執行体制と、それから今後の国会や政府の役割についての御意見をお伺いしたいと思うんです。

 顧みますと、一九九七年ぐらいから、特に国会では遺伝子組み換え食品の問題が議論になって、その安全性の是非、表示の義務づけの可否を中心として取り上げられました。表示問題は国会の審議の中心になって、小委員会までつくられた経過がございます。その意味では、食品問題についてのさまざまな議論を、国会も一つの役割を担ってリードしてきた側面もあったかに私は思います。また、その役割を果たさなければならないと私は考えています。

 そこで、皆さんの中を見ますと、例えば、課題の先送りで報告書は不十分なものとなったという御意見もございますし、それから、執行体制のあり方も議論されず、このままでは表示体制が後退するのではないかと心配しているということも書いておられました。

 したがって、二つの点、執行体制についてどのようにすべきかということをお四方からお伺いし、また、食品表示制度充実のために国会や政府は今後何をすべきかという点について、御意見を賜りたいと思います。

○西藤参考人 現実の食品表示の執行体制は、先ほど来御論議がありますように、各省庁にまたがっている、あるいは都道府県を含めてまたがっている状況でございます。ただ、法律を含め、企画立案は消費者庁に一元化されているわけでございますので、先ほども申しましたように、その運用についての一元的な対応を通じて、それは事業者にも消費者にもメリットがあることにつながるんだろうというふうに思っております。

 申しわけありませんが、国会との関係についてもお尋ねでございますが、なかなかそこまでは、私、すぐには思いつかない状況でございます。

○山根参考人 執行体制につきましては、先ほども申し述べましたけれども、今回の一元化の期待される目的を果たすためにも、執行体制も一元化をして強化させることが必要だと思っております。厚労省、農水省、財務省、消費者庁、一元化をして強化をして、執行に力強く当たっていただきたいと思っております。検査機関、研究機関、自治体とも十分に連携をとって進めていただきたいというふうに思っております。

 今後ですけれども、三法が、表示の部分が一本化をしてスタートされる、それはまだまだ入り口ということでございまして、課題が山積しております個別具体的な検討がこれから始まると思いますので、十分情報公開していただいて、幅広く国民で議論をしながら、よりよい食品表示法がまとまっていければというふうに思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○鬼武参考人 二点御質問をいただきました。

 執行体制につきましては、ほかの参考人からも出ましたように、今回は一元化のもとにということになりまして、やはり消費者庁がイニシアチブをとるかどうかが一つの大きな鍵となっていると思います。そのもとで、地方農政局なり保健所がいかに迅速に一元化の中で動いてもらえるか、その点が重要だと思います。

 それと、二番目に、食品表示全体について国会で論議、これも個人的になりますが、少し僣越でございますが、参考資料の三を見ていただけますでしょうか。

 少しお話ができませんでしたので、これは実は、オーストラリア、ニュージーランドの食品表示に対する報告書であります。これは、オーストラリアの元厚生労働大臣がもととなって報告書を書いたものでありまして、すなわち、食品表示は人によって価値も違うし、いろいろな価値観でもって優先順位も違ってくるわけです。

 その点からすると、今回、一元化の報告書の中で、食品の安全性にかかわることが最優先でされるべきであるというふうに記載されております。その点からしますと、新食品表示法の中でも、この中に書かれております食品の安全性にかかわる問題、予防的公衆衛生といいますと、いわゆる栄養成分表示なり、その辺が行政の介入としては順位が高い分野であります。

 一方、新規テクノロジーとしては、これは遺伝子組み換え作物でありますとか、それからナノテクノロジー、この分野については、政府の介入については期限つき義務だというふうに書いております。その報告書の中でユニークな点は、例えば、遺伝子組み換えについては、三十年後かどこかで検証しろというふうに、つまり、食経験の中で安全性が確認されるからということで、中ぐらいの位置になっております。

 それから、品質を選ぶ、いわゆる消費者の価値問題ですね。それは行政の介入としては一番低いというふうになっておりまして、これがいわゆる食品表示のヒエラルキー、階層として区分されたものであります。

 まず、そういう点をぜひ全体で議論していただいて、日本が、今、食品表示としてどの分野に何を求めるか、最終的には、消費者にわかりやすい表示は何なのか、実現のために何が必要なのかという点が重要だと思います。ぜひよろしくお願いいたします。

 以上でございます。

○池戸参考人 まず、執行体制ですが、ルール等が幾ら立派でも、執行体制によって実効性が変わってきます。

 先ほど参考人の方々が言われたとおりなんですが、私自身としても一つプラスして申し上げたいのは、抑止効果としても、規制というのはかなり効果がある。今まで、過去の例からいっても、不正をした一部の業界のために、消費者に非常に多大な影響を及ぼすだけじゃなくて、特に中小企業とかそういったところの過度な負担になっているということもございますので、ぜひ適正な監視なり的確な指導をやっていただきたいということです。

 そのためには、やはり特殊な分野なので、人材育成みたいなものも非常に重要だと思います。これは非常に、ノウハウ的なものが伴わないと、なかなかチェックができないというところもございますので、今いる地域センターの千数百人の方のより効率的な、効果的な使い方というんでしょうか、活用の仕方というのも含めて、ぜひやっていただきたいというのが一つです。

 それから、あと、この制度全体がうまくいくかどうかというのは、まずは消費者自身が、どういう制度になるかというのをぜひ理解を十分していただいて、活用していただくというところまで必要かと思いますので、そういったところに対する普及啓発。

 それから、あと、こういう動きについて、大手の企業さんは、うちの検討会でも、オブザーバーで、アンテナを高くして、いつも熱心に聞いておられるんですが、大半が中小企業でございます。ですから、中小企業の方々に対しても、これは企業さんからすると、消費者というのはお客様ですから、求められているものをお客様に対してぜひ情報提供したいという気持ちはあるかと思いますので、今の制度の仕組みそのものが、今どういう動きがあるかも含めて、決まった後ではなくて、今の動きの状況も踏まえて、きめ細かに提供していただければありがたいなということでございます。

 以上です。

○穀田委員 ありがとうございました。