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【第183通常国会】 衆議院・内閣委員会 ○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。 鹿沼児童六人クレーン車死亡事故を受けて、昨年六月から、一定の病気等に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会が開催され、十月にまとめられた提言が今回の法改正案の土台になっています。 提言は、一定の症状を有する者を的確に把握するための方策について、「運転に支障を及ぼす症状について故意に虚偽の申告をした者に対する罰則の整備が必要」と結論づけ、それが今回の法案に盛り込まれています。 症状等の虚偽記載に対する罰則の整備の是非に関して、検討会の委員が次のように質問しています。「結局、虚偽申告が明らかになるのは交通事故が起こったときだとすれば、罰則を付けたことの実効性はどの程度になるのか」、こう質問しています。 これに対して、警察庁の担当者はどのように回答していますか。 ○倉田政府参考人 お答えいたします。 お尋ねの有識者検討会におきましては、提言にも掲載されていますとおり、事務局である警察庁の出席者から、「虚偽の申告が発覚するのは、実際には事故の発生後になることが多いかもしれないが、事務局としては、罰則の積極的な適用を目指しているのではなく、虚偽申告に対する抑止力・感銘力を期待している」旨の説明を行ったものでございます。 同検討会において取りまとめられました「一定の症状を呈する病気等に係る運転免許制度の在り方に関する提言」におきまして、同検討会として考える運転免許制度の見直しの方向性として、「罰則規定の感銘力(抑止力)によって、虚偽申告に一定の抑止効果が期待できることからすれば、罰則を整備する必要性は認められる。」との御提言をいただいたところでございます。 ○穀田委員 実効はどの程度になるかと聞いているので、後の方はいいんですよ。 提言では、虚偽申告に対する抑止力が今回の罰則に期待される、今もそうありました。 現行の道路交通法第百十七条の四は、偽りその他不正の手段により免許証または国外運転免許証の交付を受けた者に対して、一年以下の懲役または三十万円以下の罰金に処すると規定しています。この一年以下の懲役または三十万円以下の罰金という規定は、今回の法案で新設を予定している虚偽記載の量刑と同じです。 運転免許の取得時に病歴なしにチェックを入れる虚偽記載を行った場合には、臨時適性検査を経ずに免許が付与され、現行の免許証不正受交付罪が成立するのではありませんか。 ○倉田政府参考人 お答えいたします。 免許の取得時におきましては、免許を受けようとする者が一定の病気にかかっていないことを含め、運転適性を備えていることを確認した上で免許を与えることとしているため、病状申告の内容によっては免許が保留される場合がございます。そのため、病状申告の内容と免許証の交付には因果関係が認められることから、免許を受けようとする者が自己の病状に関し虚偽の記載をすることにより免許証の交付を受けるに至った場合においては、免許証不正取得罪が成立することとなるものと認識をしております。 ○穀田委員 現在でも、運転免許の取得時には、運転の適性がない、一定の病気等の症状があるにもかかわらず、申請書裏面の病気の症状等申告欄に虚偽の記載をして不正に免許の交付を受けた場合には、今回の法案と同じく、一年以下の懲役または三十万円以下の罰金という罰則があります。 虚偽申告に対して罰則が全くなかったのではなく、免許取得時の虚偽記載については、法案と同じそういう罰則があって、一定の抑止力、感銘力があるということになります。 第二回の検討会には、「「病気の症状等申告欄」の虚偽記載と免許証不正受交付罪の関係」という資料がありましたが、これを見ますと、運転免許の取得時に病歴なしにチェックをして虚偽記載をした場合には、そういう意味での不正受交付罪が成立すると書いてあるんですね。その一方で、運転免許証の更新時に病歴なしにチェックをして虚偽記載をした場合には、免許継続、犯罪不成立となっています。 ですから、現行の罰則に問題があるとすれば、免許の更新時にこの罰則が適用されないことであります。抑止力が不足しているということであれば、現行の免許証不正受交付罪を免許証更新時にも適用するという方法もあったんじゃないでしょうか。 ○古屋国務大臣 お答えします。 これのそもそもの発端は、もう委員御指摘の、栃木県鹿沼市で、一昨年の四月、子供六人が亡くなりました。大変痛ましい交通事故ですけれども、その運転者は免許更新時に自己の症状を正しく申告していなかったということが判明しているんですね。ですから、今回の改正は、そのような悲惨な事故を防止するため、その者の症状に関する質問票に虚偽の記載をした者に対する罰則規定を設けることによって、質問票に正しく記載しなければならないという規範を法律上明記した、こういうことであります。 ○穀田委員 悲惨な事故を何とか防ぎたいというのはみんな共通なんですよね。それはそのとおりなんです。ただ、私が言いたいのは、肝心なことは、運転の適性のない者に運転をさせないことであって、現行でもそのための虚偽記載に対する罰則があるわけです。今回の改正は、これを更新時に適用拡大するのではなく、正確な記載をしているかどうかに対して新たな罰則をかけるものとなっています。皆さん御承知のとおり、大臣もよく御承知のとおり、ここのところにあるわけですね、罰則規定を含めて。これは何回も皆さんが議論してきたところですよ。 そこで、不正な取得や更新自体への罰則ではなくて、今言いましたように、結局のところ正確な記載のための罰則であります。私は、適切な罰則かどうか議論が残るところだと率直に思います。検討会の提言で、警察当局も、「罰則の積極的な適用を目指しているのではなく、」ということをわざわざ発言している状況であります。したがって、今回の罰則が適切だったかどうかは、今後、検証していかなければならないと私は考えています。そのことは言っておきたいと思います。 そこで、これまで虚偽記載の罰則のあり方について議論しましたけれども、現実問題として、運転の適性のない者が、免許の申請時や更新時にチェックをくぐり抜けてしまった場合、その不正な免許を取り消すには当然適性相談があると思います。もう一つは、不正が発覚する場となっているのが、客観的には交通事故ではないかと考えます。最新の統計で、一定の病気等取り消し等処分件数でその発見の端緒となったもので一番多いものから三つをお答えいただきたい。 ○倉田政府参考人 お答えいたします。 平成二十四年中、一定の病気等を理由とする取り消し等の行政処分を行った者の発見の端緒として最も多かったのは交通事故でございまして、全処分件数の一七・九%でございました。 次に多いのは、一定期間後の臨時適性検査でございまして、これは、例えば今後一定期間であれば発作が起こるおそれがない旨の医師の診断があった場合に、免許の付与等をした上で、その一定期間経過後に症状を確認するために行う臨時適性検査でございますが、全処分件数の一四・六%でございました。 三番目に多いのは、本人からの運転適性相談であり、全処分件数の一三・三%でございました。 ○穀田委員 今、三つありました、交通事故、一定期間後の臨適、それから本人からの相談、こういうことですね。 そこで、今回の法案の、先ほども大臣からお話がありました、発端となった鹿沼児童六人クレーン死亡事故では、遺族会の資料によりますと、事故を起こした運転手は、その事故の前に十二回の事故を起こしています。しかも、その多くは物損事故であります。これらの事故のときに運転の適性を見きわめていればと思わずにはいられないんですね。 実際に、人身事故よりも物損事故の方が多いと思うわけですけれども、聞きますと、物損の全国的統計はないと報告を受けました。ところが、物損事故のデータベースがある埼玉県では、大体過去五年間で、人身事故に対して物損事故は約三倍なんだそうです。二〇〇八年には物損事故の割合は人身事故の二・九倍だったものが、二〇一二年には三・七倍になっています。 つまり、これは、データベースに整備されたことが影響して物損事故の把握が進んでいるのか、それとも、実際に物損事故がふえているのか、それ自身は不明です。しかし、いずれにしても、より把握が正確になったということを示しているのは間違いありません。物損事故データベースの整備は、運転の適性を見きわめる上で重要な手段となると思いますが、いかがでしょうか。 ○古屋国務大臣 委員御指摘のとおり、物損事故のデータベースでは、一定の症状を呈する病気等に該当する者を把握する、このための有効な手段の一つであるというふうに認識をいたしております。 昨年の、一定の症状を呈する病気等に係る運転免許制度の在り方に関する、いわゆる有識者検討会の提言においても、有効な方策の一つとして物損事故のデータベース化が提言をされているところでございますので、今後とも、警察庁を通じまして、まだ未構築の都道府県がございますので、そういったところに対しては、このデータベースの速やかな構築について督励をしてまいりたいというふうに思っております。 ○穀田委員 今、督励とありました。調べてみますと、やはり、運用を行っていない都道府県というのが、青森、岩手、神奈川、東京、富山、岐阜、愛知、滋賀、京都、兵庫、広島、山口、愛媛、熊本、結構あるんですね。ですから、これを、今大臣からありましたように、有効な手段であるということはもうお互いに認識しているわけですから、ぜひ、いつぐらいまでに、やはりこれは期限を切って、大した話じゃないんですよね、大した話じゃないというのは言い方が悪いですけれども、データベース化するということについて言えば、決めればできることなので、その辺の見通し、考え方を最後にお聞きしたいと思うのですが。 ○古屋国務大臣 先ほど答弁申し上げましたように、これは極めて有効なデータベースですので、警察庁から各都道府県警察に対しては、早期にデータベースを整備するよう指示を出しております。できるだけ早い時期にこのデータベースの整備が推進をされるよう、引き続き督励をしていきたいと思っています。 ○穀田委員 ぜひお願いしたいと思います。 私は、今回の問題でもう一つ最後に言っておきたいんですけれども、法の一定の病気等の対象であって今回問題が取り沙汰されたてんかんは、社会に差別が現に存在しています。それから身を守るために患者がその病歴を隠さざるを得ないという現実があります。そのもとで、新たな罰則や医師の通報制度の新設について、専門医からは、かえって患者と医師の信頼関係を損ない、逆効果になるのではないかという指摘もあります。 法令で明らかにされているように、てんかん患者の全てに運転の適性がないわけではありません。七割から八割の患者は投薬などでその発作が抑えられると言われています。運転の適性のない者に運転をさせないという目的に沿って今回の道路交通法改正案に盛り込まれた対策が効果を上げているかについては、先ほどお話ししましたように、検証していくことが求められていると私は考えます。 障害者差別の問題では、今国会には障害者差別解消法案が提出され、当内閣委員会では、前々回、その質疑を行い、全会一致で参議院に送りました。現実は、障害によって車の運転ができない人たちへの支援措置がおくれていることは皆さん共通の認識であります。したがって、この問題の解決も焦眉の課題だということを特に強調して、終わります。 |
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