国会会議録

【第183通常国会】

衆議院・消費者特別委員会
(2013年6月20日)




○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 消費者被害は、数万円から、多くても百数十万円と、比較的少額のものが多く、被害を受けた消費者がそれを取り戻そうとしても、紛争解決に要する費用、訴訟に係る費用、労力、また消費者と事業者間の情報量や交渉力の違いなどを考えると、個人で訴え、被害回復を図るということは困難であるとして、結局、多くの方々が泣き寝入りしてきているのが現状であります。

 二〇〇〇年に成立した消費者契約法の附帯決議で、事業者の不当な行為に対する差しどめ請求に係る団体訴訟等について検討することが明記されました。その後、消費者団体訴訟制度が、差しどめ請求ですが、創設された二〇〇六年の消費者契約法の改正で、損害賠償請求するところまではできなかったものの、その必要性等を検討するよう附帯決議がされました。

 この集団的消費者被害救済制度については、二〇〇七年のOECD理事会勧告でその導入が提言されており、二〇〇九年の消費者庁設置法附則でも、三年を目途に必要な措置を講じることが定められていました。この間にも、内閣府の研究会、消費者庁の検討会などで長い間議論が続けられてきたものであります。

 先週からやっと衆議院で議論が始まったところですが、本法案の早期成立は、長年消費者被害の問題に取り組んできた多くの消費者団体、国民の悲願であり、我が党も早期成立をさきの総選挙公約に掲げてきました。

 五月十日の参議院消費者問題に関する特別委員会で、私どもの大門実紀史議員が、早く審議入りし早く成立させていただきたい、必ず今国会中で成立させる必要があるものだと、私どもの党の立場を表明しているところであります。

 事実上、今国会での成立は難しいと言わざるを得ませんが、次の国会では必ず成立させるように私どもも要求をし、努力したいと思います。

 その上で、幾つかの点について質問します。

 端的に言って、本法案の成立は消費者にとってどういうメリットがあるのか、大臣にお答えいただきたいと思います。

○森国務大臣 本制度の導入により、消費者は、特定適格消費者団体による一段階目の訴訟追行の結果を踏まえて、二段階目の手続に加入することができます。そして、実際の二段階目の手続は、特定適格消費者団体に授権をして行うことになります。また、この授権の機会は、消費者に通知、公告がなされます。

 このため、今御指摘のような被害があったときに、被害回復に要する時間、費用、労力等が低減をされまして、消費者が訴訟手続を使うことをためらって泣き寝入りをするということが回避されるようになりまして、これまで回復されにくかった消費者被害を回復することができるようになるというところがメリットでございます。

○穀田委員 それに対して、経団連や在日米国商工会議所など日米欧の七経済団体は、三月二十五日、政府に対し、新しい集団訴訟制度を慎重に検討するよう求める緊急提言を発表しました。

 日米欧の七経済団体の提言を見ましたけれども、消費者の受けた被害を回復する本制度は、一たび導入されれば、日本経済の再生プロセスに少なからぬマイナスの影響を及ぼすおそれがあるとして、本法案を再考し、拙速な立法による悪影響を回避してほしいと。つまり、本法案はやめてくれと圧力をかけてきているわけでありますが、その辺、少し見解をお示しください。

○森国務大臣 経済団体、七団体からの御提言をいただきましたし、そのほかにも個別に強力にいろいろな御意見もいただきましたけれども、基本的には、その内容は、本制度における不適切な訴え提起または濫訴のおそれ、それからもう一つは、日本経済への影響がマイナスではないか、そういう御懸念を示されました。

 これに対して、私は、まず、不適切な訴え提起の懸念については十分配慮してあるということで、例えば、一つは、原告適格を特定適格消費者団体に限定しておりまして、厳格な行政監督の対象としていること、そして二つ目として、多数性を訴訟要件としておりまして、要件を満たさない場合は共通義務確認の訴えが却下をされること、三つ目としまして、対象となる請求権を消費者契約に関するものに限定をしておりまして、その上、損害賠償については拡大損害等を除外していること、四つ目といたしまして、一段階目の判決の効力が他の特定適格消費者団体にも及ぶとして紛争の蒸し返しを防止することなど、さまざまな手当てを講じておりますので、不適切な訴えが提起されることがないようにしておりますということで、丁寧に説明をしてまいりました。

 また、日本経済への影響につきましては、むしろ、本制度により被害の回復が容易となれば、事業者が違法に得た不当な利益を返還させることになりまして、事業者の不当な行為が抑止され、悪質な事業者を市場から退出させることになりまして、良質な事業者、消費者を大切にしている事業者にとっては、市場がきれいになりますので、良質な事業者にとってより有利になるということで、有益な法案である、経済界にとっても消費者にとってもウイン・ウインとなるということを御説明いたしまして、御納得をいただいたと思っております。

○穀田委員 御納得をいただいたということですが、私ども、別に前半の説明で全部オーケーとしているわけではないんですね。

 特に、今お話ありましたけれども、強力にどうもあったみたいで、この提言を公表した週刊経団連タイムスでは、同じように、再度、「消費者に対する実効的な救済を実現するとともに、雇用創出、賃金上昇、イノベーションおよび経済成長といった政府の経済再生プログラムと整合的な制度とするために、十分に慎重な検討が必要である。」こうまで言っているわけですよね。

 私はこの主張の整合性がどこにあるのかよくわかりませんけれども、そういう中で、一定の動揺も広がって、一時は法案提出見送りかという報道も出ました。さらに、法案の中身も、先ほど私、若干意見はあると言いましたけれども、当初議論されていたものより後退しているんじゃないかと私は感じています。

 何でこんなことを私は言っているかというと、その後、法案は、四月九日の自民党総務会や与党政策責任者会議で法案提出が了承されまして、それにもかかわらず、直近の十二日の閣議決定は見送られました。この間の質疑で、大臣も一生懸命、四月十九日に閣議決定されたことを誇らしげに言っていましたけれども、今言った十二日の、直近の閣議決定は見送られまして、その前の日の十一日に、経団連が消費者庁に、導入時期尚早とわざわざ要請をしておられる。こういう主張もあるわけですね。ですから、そのことを指して強力にということを言ったんじゃないかと思うんですけれども。

 経団連などは、今述べましたように拙速な立法はすべきでないと言っていますが、先ほど私、この間のこの法律制定に至るまでの若干の経過を述べましたように、消費者団体の十数年来の運動がまずあるわけですよね。そして、国会でも制度の検討を求める附帯決議もたびたび行ってきた。それから、先ほど述べたように、OECDの理事会の勧告だとか、さらには政府の検討会等々、さまざまな議論を経てまとまったものであって、拙速という議論は当たらないと私どもは思っています。

 そこで、今、るる割と詳しくありましたので、特に日本経済にマイナスの影響を及ぼすということについて、私はそうではないと思っているんですね。先ほど大臣からありましたように、丁寧に説明して、しかも、悪質な事業者を市場から追い出してきれいにする、こういったことなどをすることによって、私は、逆に日本経済の基礎である土台をきっちりするものじゃないかと思うんですが、その辺、国民にわかりやすく、簡単にでいいんですけれども、説明していただければと思います。

○森国務大臣 本制度は、既存の制度では消費者がその権利を行使して被害を回復することが困難であることに鑑みまして、その権利行使の実効性を確保するという観点から創設されるものでありますから、そもそも法遵守を徹底し適法な事業を行っている良質な事業者においては、本制度が導入されたとしても、特段の対応は必要ないはずであります。むしろ、本制度によって被害の回復が容易となり、事業者が法律に違反して得た不当な利益を返還させることは、事業者による不当な行為の抑止にもつながります。そして、悪質な事業者を市場から退出させることになります。

 その結果、消費者が安心して経済活動を行うことができる市場が整備をされまして、また、一旦悪質な事業者に渡っていた違法な利益が消費者に戻されることによって、消費者の消費の活性化、そして健全な事業者の発展や公正な競争につながるということで、良質な事業者にとってはメリットがむしろ大きいものというふうに考えております。

 近年、委員は先ほど少額な被害が多いとおっしゃっていましたが、少額な被害も多いですし、また、高齢者の多額な被害も多いのです。その多額な被害が戻されるということによって、またそれを良質な事業者に対して消費していただくということも可能になるわけです。したがって、本制度が日本経済にマイナスを及ぼすという指摘は当たらないものと考えております。

○穀田委員 おっしゃるとおりで、私どもも、今の日本経済にとって、そういう悪質なやり方に対する、そういう意味での事実上の規制といいますか、そういう抑止効果があると。それから、消費の活性化といった問題はそのとおりだと。

 私は、高齢者の方が多額のものをやっているということを指摘していないわけじゃないんですよ。別にそれはそのとおりあるわけでして。ただ、問題は、経済団体にその趣旨を十分伝え、理解をさらに促すよう努力すべきだということを私は言っておきたいと思うんです。

 もう一つの側面ですけれども、日本版クラスアクション、濫訴になるんじゃないかということ、いまだにそういう報道がやはりあります。私は、こういう報道は大きな勘違いがあると思うんですね。先ほど述べた五月の参議院の消費者特別委員会で、私どもの大門実紀史議員がこの点について質問し、そうではないということをるる述べられて、当局の方も述べられていますので、私も、濫訴になるという指摘は当たらないということを改めて言っておきたいと思うんです。

 そこで、一つ聞きたいんですが、二〇〇七年六月から消費者団体訴訟制度、差しどめ請求訴訟の運用が始まりましたけれども、この運用開始から直近まで、訴訟等の現状はどうなっているでしょうか。

○川口政府参考人 お答え申し上げます。

 現在ございます消費者団体訴訟制度でございますが、二〇〇七年六月の制度の運用開始以降、十一団体が適格消費者団体として認定されておりますが、この間、訴えが提起されたのは三十件となっております。このほか、訴訟に至らなくても、裁判外の申し入れの活動を行っておりまして、これにより事業者が任意に改善をして解決した例もあるということで、本制度は所期の成果を得ているというふうに感じております。

○穀田委員 消費者トラブルが数多く国民生活センターに寄せられているわけですよね。にもかかわらずと言ってはちょっと失礼ですが、制度運用約六年で三十件と。国民生活センターに寄せられる苦情相談は、直近の二〇一一年で約八十八万件なんですよね。もちろん一概には言えませんよ。でも、三十件ということは年間五件程度ということになりますわな。だから、これはやはり少ないんじゃないかなと率直に言って感じるわけですよね。川口さんもうなずいてはりますから、そう思うてはるんでしょう。別にうなずいたからといって認めているという意味を言っているんじゃないですよ。

 それはそうなんだが、やはり、はっきり言って五件じゃということを言っているわけで、ですから、私は、濫訴ということじゃなくて、被害を受けながら泣き寝入りする消費者をなくそう、減らそうという本制度の趣旨を生かして積極的に活用されるよう、消費者庁として努力すべきであるということを言っておきたいと思うんです。

 先日、私は、消費者団体や適格消費者団体の皆さんから要望を受けました。したがって、その点で幾つかの点について聞きたいと思います。

 特定適格消費者団体の認定を受ける際には、執行するに足りる経理的基礎を有することとされています。適格消費者団体は、会員等の会費や寄附等で運営されている団体がほとんどであります。差しどめ請求という公益的な業務を担う団体が継続的に活動できるよう、財政支援が必要ではないかという点が述べられていますし、私もそのように思います。

 そこで、現在の適格消費者団体の財政規模というのをどの程度として把握されておられますか。

○川口政府参考人 現時点における適格消費者団体の財政規模についてのお尋ねでございますが、二十四年三月時点での集計をしておりますけれども、適格消費者団体の財政規模、その後に成立した、認定を受けたものも合わせまして、十一団体の単純平均で数字を申し上げますと、正味財産で千四百二十八万円、収入といたしましては三千二十八万円、支出につきましては二千八百七十八万円となっているところでございます。

 また、団体の収入については、多くの団体では会員や賛助会員からの会費収入や寄附収入で賄っているという現状でございます。

 なお、差しとめ請求訴訟を提起した場合には、消費者からの報酬や費用の支払いを受けることができないというのが現状でございます。

 以上でございます。

○穀田委員 現状は平均すればその程度だということで、本当に苦労なさっているわけですよね。

 今回の法案では、第一段階での仮差し押さえ等が新たに盛り込まれました。このことは、被害救済の実効性を確保するために大いに歓迎するところであります。

 しかし、その一方で、命令の申し立てに当たっては、差し押さえたい金額の二割程度の担保提供が必要になります。例えば一億円の訴訟ならば、大体二千万円ぐらいは用意しなければならなくなる。現状の財政規模を考えると、現在十一ある適格消費者団体の全てがこの担保金を準備することは大変難しいのではないかと思います。また、通知、公告費用を特定適格消費者団体が負担することになった場合にも、その負担の大きさが団体としての存続に影響を与える場合があると考えられます。

 消費者団体や適格消費者団体の皆さんからの要望の多い公的な財政支援制度を設けられないか、改めてこれは聞きたいと思うんです。

○亀岡大臣政務官 今、穀田委員の言われたように、まさに財政基盤がしっかりしていないと訴訟には対応できないというのがあります。適格消費者団体は、不特定かつ多数の消費者の利益のために差しとめ請求権を行使する団体であり、差しとめ請求を担う適格消費者団体への支援については、消費者庁としても、消費者団体訴訟制度や適格消費者団体の周知、普及のみならず、認定のNPO法人制度の活用、これはまさに、寄附金控除や税額控除なども、しっかり寄附金ができるような手伝いをしながら、しっかりと支援体制を実施してきたところでありますけれども、今後とも、適格消費者団体等から意見をしっかり伺いながら、適格消費者団体に対する必要な支援について引き続き検討しながら、少しでも支援体制をとるように考えていきたいと思っております。

○穀田委員 前回も議論になりまして、大体、控除の話はいつも出るんですよ。それは何回もやっているので。今後とも、意見を伺いながらと。意見は何回も出ているんですよ。

 問題は、本法案をいじるというのはなかなか難しいですよ。そこで、実際に、第一段階を担うそういった適格消費者団体が財政的には非常に困難、厳しいというのは誰もが知っているわけですやんか。したがって、今回の法案が、そういう意味での被害者救済に取り組む上で、絵に描いた餅にならないようにするためには、もう一歩踏み込む必要があると。

 だから、公的な補助や援助制度が私は必要だと思っているんです。無利子一時貸与だとか直接の支援が難しければ、例えば、中小企業の資金繰りには保証協会があるように、せめてそういう保証協会などだとか、問題は、税金の控除というのはそこまで何回も言っているわけですから、それでは、皆さんからの要望をもう一つ受けとめて、もう一歩踏み込む必要があるんじゃないかということを再度聞きたいと思うんです。

○亀岡大臣政務官 まさに今指摘されたとおり、今しっかりと検討をしている段階でありまして、まさに、訴訟の段階でかかった費用の実費は清算できたとしても、その後にしっかりとたくさん出てきた場合においての対応ができるかどうかも含めて、今議論、検討しているところでありまして、これはしっかりと体制を整えていきたいと思います。

○穀田委員 しっかりとしっかりとばかり二回も三回も言っても、どうも、これ以上言っても詮ないことだけれども、ここは、そういう制度をつくる限り、その土台をしっかりしたものにしなきゃならぬということを言っておきたいと思うんです。

 それで、消費者被害を受けても従来は泣き寝入りしてしまう場合があったわけで、先ほど大臣は、労力が少なくなる、それから費用も低額になるということで減らせるというメリットの答弁がありました。

 そこで、本制度の趣旨を実現するためには、法案成立後、施行まで三年あります、その間に制度の周知徹底を行う必要があります。

 集団的消費者被害回復に係る訴訟制度案について、昨年八月から九月に意見募集をしています。その取りまとめを拝見しました。その中で、本制度の周知を十分に行った上で、施行までに相当な期間を置くべきだという意見について、どんな答えをしているかというと、「制度の周知を行い、施行までに必要な期間を設けるため、公布の日から三年を超えない範囲内で施行することとしている。」こう答えているんですね。これは答えになっていないんですよ。なぜかというと、附則第一条をそのまま述べているにすぎないんですね。こういう話では、消費者のいろいろな疑問や要望に対して本当に答えているんかいなということをはっきり言って言わざるを得ない。

 したがって、周知の問題について具体的にはどのようなことを考えておられるか、さらに述べてほしいと思います。

○川口政府参考人 先生御指摘のように、本制度の円滑な運用を図り、制度の実効性を確保するという観点からは広く十分な周知が必要ということについては、私どももそう考えておりまして、消費者団体、事業者団体のみならず、広く国民に対しても、この特定適格消費者団体がどういう役割を果たしていくのかということについて十分な周知をすることが重要だというふうに考えております。

 消費者庁では、今年度の予算におきまして、広報資料の作成、それから被害救済制度に係るシンポジウムの開催などに係る経費を計上しているところでございまして、本法案が成立いたしましたら、本制度の必要性等の周知をしっかり図っていきたいと思っております。

 また、あわせて、本制度の施行までの間に、関係各所とも連携いたしまして、制度説明会やシンポジウムの開催、消費者庁と事業者団体及び消費者団体との意見交換会の開催、それから、国民にわかりやすい、あるいは事業者、消費者団体にわかりやすい広報物の作成などを行いまして、本制度について最大限の周知啓発に努めてまいりたいと考えております。

○穀田委員 国民に広く十分な周知、それから最大限と、これは単語としてはよくわかるんですね。現実はどうかということで、先ほどのようなお答えが出るような状況では、およそそんなふうに、大丈夫かいなということを思うわけですよね。

 しかも、二〇〇六年に適格消費者団体による差しどめ請求制度を導入したわけですが、大きな制度改正だったと思うんですね。このときだって、ホームページやパンフレット作成が主な周知対策だったと私は思っているんですね。だから、実際に対応している団体の話を聞きますと、どうなっているかといいますと、適格消費者団体についてもADRと同じじゃないかというふうなことが言われるぐらい、十分に理解されておらず、不十分さを実感しているということだと思うんですね。

 私は、本法案の趣旨というのは、国民がどう理解していただけるかということだと思うんです。したがって、最大限というふうにおっしゃっていたので、私の方からも、それじゃ最大限のことについて一定の提案を行ってみようと思うんですね。

 一つは、消費者相談員や消費者センターの担当者など、直接消費者の相談に対応する職員への研修をすべきであると。それから二つ目は、教育の中での取り組みを重視すべきであると。

 消費者教育の推進に関する法律が成立しています。この法律は、次のように述べています。「消費者教育が、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差等に起因する消費者被害を防止するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるようその自立を支援する」ものだと。「国の責務」として、「自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができる自立した消費者の育成が極めて重要であることに鑑み、」「基本理念にのっとり、消費者教育の推進に関する総合的な施策を策定し、及び実施する」、このように書いているんですね。

 私は、自立した消費者をつくっていくことが大事だと。先ほども各省庁とというような話がありましたけれども、消費者教育の中に位置づけるとともに、学校教育の現場でもその重要性を認識してもらう必要があります。学校教育の中で、総合学習の時間を利用するなど、文科省にも協力を求めるべきだと思います。

 大臣がいなくなりましたので、副大臣に言いたいところですが、政務官ですか。副大臣に行きましょうか。

○伊達副大臣 穀田先生に御指名いただいたので。

 私も参議院の方では十分答弁をさせていただいているので……(穀田委員「それは知っています」と呼ぶ)そうですか。

 それで、これは学校教育なんかにも取り入れるべきだという先生のお話でございますが、御存じのように、昨年成立した消費者教育推進法においては、「「消費者教育」とは、消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育及びこれに準ずる啓発活動」と定義されております。

 本制度は、消費者に被害が生じた場合に被害回復の実効性を確保するためのものであるから、当然その周知啓発に該当し、消費者教育の中に位置づけられているものであり、文部大臣を初めとする関係者とも連携協力しながら、あらゆる機会を捉えて周知を行っているところでございます。

 現在、政府においては、検討中の消費者教育の推進に関する基本的な方針、これは案ですが、作成中でございます。これについても、消費者被害の適切な迅速な救済のための制度の整備に必要な施策を講じ、また、消費者教育により、消費者がみずから積極的な行動をとることの理解の増進を図ることを盛り込む方向で、私ども検討をいたしております。

○穀田委員 最初の方のものは余り答えがなかったんですが、よくそれも頼むと。

 それで、先ほど大臣は、高齢者ということの話がありましたよね、被害があるんだと。すぐ消費者庁というのは、パンフレットとホームページ、こうくるんですよ。ホームページを見ているのやったらそんな苦労はないんですよ。見ない人が被害を受けているわけで、そういうことはよく知っておかなくちゃならぬと私は思います。

 そこで、周知という点でいえば、消費者庁サイドから、○○消費者被害があり、あなたは被害者ではありませんかという具体的な広報が要るんじゃないかと私は思うんですよね。今こういう仕事が適格消費者団体の仕事となっていますが、被害者を特定し通知することは至難のわざです。そのために、一つの方法としてテレビ広報という手もあるんじゃないかと。

 農水省は、御飯食キャンペーンのPRを行っているんですよね。それやったら消費者庁も、消費者教育番組やPRなどをもって消費者に具体的なPR、広報をすべきと思うんですが、その辺、いかがですか。

○亀岡大臣政務官 まさにテレビは、一般の方々全てに広報活動ができるということですので、これもしっかりと検討していきたいと思います。今検討している最中であります。

○穀田委員 いつも検討、検討している最中と言って、そのうち忘れないようにしてね。

 もう一つ、やはりここのところは、金がないとかなんとか言うのやったらまだかわいいけれども、検討中だというのではもう一つ前の段階かなと思ったりして。さらに踏み込んで、私は、こんなことぐらいでけへんで何が消費者の被害救済だと思うんですよね。だから、そこは心して取り組んでほしいと。

 もう一つ大事なのは、事業者への周知徹底です。先ほども議論しましたように、集団的消費者被害救済制度なんてつくられたら困ると心配している向きもある。誤解している事業者、中小企業者も多いんじゃないかと私も思わざるを得ません。

 そこで、先ほど大臣もお話があったように、悪質な業者を排除し、良心的な経済活動を行う企業にとってはむしろプラスになるものであって、被害の未然防止という観点からも、中小企業者も含め事業者に対する周知徹底はきめ細かくやるべきだと思うが、どういうことを考えていますか。

○亀岡大臣政務官 まさに今事業者側がしっかりと理解をしていないと大変なことになりますので、実体法に基づきまして、今しっかりと、これから今年度予算において、広報資料の作成、それから被害救済制度に係るシンポジウムの開催、これをしっかりと今計上して取り組んでいこうとしているところであります。

 できれば、施行までの間に、事業者団体の協力を得ながら、制度説明会やシンポジウムの開催、消費者庁と事業団体及び消費者団体との意見交換会の開催、パンフレット等広報物の作成などをしっかり行いまして、本制度の関連する実体法について、十分事業者側に周知徹底するよう図ってまいりたいと思っております。

○穀田委員 先ほど言っている広報の中身と余り変わらへんのやけれども。

 私は、ここは要するに、いろいろな意見を言っている団体があるからこそ、一般消費者の場合にはずっと広くてなかなか対象をどう見つけるかという問題は大変なわけですけれども、事業者の場合ははっきりしているわけでしてね、そこにおるわけだから。

 だから、どういう問題点で、今、濫訴の問題や、それから、先ほど悪質なという話がありましたけれども、未然防止という観点からもこれは極めて大事なんですね。だから、どんなふうな形でどうそれが進行しているのかということについても今後も聞きたいと思いますし、それは、先ほど政務官は、しっかりという言葉を何か三回も四回も使ってはるから、しっかりやってもらうというふうにしたいと思います。

 それから、これを機能させるに当たって、私は周知徹底とあわせて連携が極めて必要だと。

 京都の消費者被害の相談に乗っている方にも私はお話を聞きました。消費者被害の相談が寄せられている。その一方、例えば行政ですね、京都府にも相談がある。それぞれの相談の情報を照合することで被害の情報がわかる。状況がわかれば対応もしやすい。京都府の場合は、府の職員立ち会いのもとで個人情報の提供、本人照会も行っているので、消費者の被害救済につながりやすいと述べておられました。このように、消費者団体と自治体の連携が極めて大切かと思うんです。

 ですから、消費者庁、国民生活センター、自治体の消費生活センターや相談員の連携、さらに、情報共有を図ることが被害防止及び被害拡大の防止、それから早期救済のために重要じゃないかということを思うんですが、いかがですか。

○川口政府参考人 先生御指摘のように、本制度の施行に当たりましては、特定適格消費者団体と自治体との連携が非常に重要であるということは認識しております。

 現在の制度のもとでございますが、適格消費者団体と地方自治体との間では消費者被害情報の共有あるいは差しとめ訴訟の提起における連携がなされているところでございます。先生御指摘の京都府あるいは京都市というのはその具体的な例でございます。

 本制度におきましても、特定適格消費者団体と地方自治体との間の情報共有、連携により、消費者被害の回復に実効性のある対応がなされることを期待しているところでございます。

 なお、本法においては、現在の適格消費者団体と同様、国民生活センター及び地方公共団体から一定の情報の提供を受けられるよう措置するということで、九十一条に規定しているところでございます。

○穀田委員 九十一条に基づいてきっちりやっていただかないと、なかなか、いい例というのが全部あるわけじゃありませんからね。

 それから、今回、検討事項とされている問題があります。個人情報流出事案、有価証券報告書虚偽記載等に係る事案、また、製品事故や食中毒などの拡大損害に及ぶ事案について引き続き検討されるとしています。

 消費者団体からの要望等を踏まえて、施行後五年後の見直し規定がありますが、本制度をよりよいものとするためにも、施行状況や実施状況など、十分に調査分析を行っていくべきだと考えますが、その点の見解を述べてください。

○川口政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案附則第三条におきまして、施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしているところでございます。

 この検討でございますが、この制度のもとで行われる訴訟の運用実態に加えまして、先生御指摘のような本制度の対象とならないものも含めまして、消費者被害の発生または拡大の状況等も十分把握した上で、消費者あるいは事業者など幅広い関係者の意見を反映しながら進めてまいりたいと考えているところでございます。

○穀田委員 それはきちっとやってほしいと思います。

 国民生活センターの相談事例などを見ますと、非常に悪質な事業者もいます。最近では、プロバイダーの契約に当たって、事業者から電話で勧誘され、よく理解せずに言われるままにパソコンを操作し、事業者に自分のパソコンを遠隔操作してもらったところ、承諾していないプロバイダー等の契約に申し込まれてしまったというトラブルが複数寄せられていると国民生活センターのホームページで注意喚起されています。こういう悪質な事業者も後を絶ちません。

 本制度の仮差し押さえでも対応困難な悪質事業者による財産の隠匿や散逸に対応するため、行政機関による財産保全策を早急に検討すべきではないでしょうか。

○亀岡大臣政務官 今御指摘のあったように、まさに、悪徳業者に対してしっかりと差し押さえができるような制度ということで、本法案の中に仮差し押さえ制度というのをしっかりつくってありまして、財産の隠匿、散逸のおそれのある対応をするものについてはきちんとこれは対応できるように設計しております。

 そして、実効性を図る観点から、一段階目の訴訟手続が開始される前であっても、一般の民事訴訟制度と同様に、本制度にふさわしい仮差し押さえができる制度を整備しているところでありまして、特定適格消費者団体が手続追行主体となることにより早期の対応が可能となるものと考えております。

 それプラス、御指摘の行政による財政保全策としても、先般、六月十四日、消費者庁に設置した消費者の財産被害に係る行政手法研究会が報告書を取りまとめており、その中で、幾つかの制度、手法の意義及び課題が示されているところであります。

 この報告書を受けて、本法案の取り組みをさらに充実強化する観点から、必要な検討を今進めているところであります。

○穀田委員 しっかりと検討し、実施に持っていっていただかなければならないということをあえて言っておきたいと思うんです。

 私、次回の委員会でも特に証拠開示制度の問題などを含めて質問したいと思っていますが、ぜひ早急に審議を進め、次の国会では必ず成立させるよう、当委員会としても力を合わせていくべきだということを提起して、きょうの質問は終わります。