国会会議録

【第185臨時国会】

衆議院・消費者特別委員会
(2013年10月30日)




○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 四人の参考人に心から感謝を申し上げます。

 私ども共産党も、今国会でのこの法案の成立は必要と考えています。

 そこで、今回の法案をめぐって、今多くの方々から意見が出ましたけれども、濫訴が一つの焦点になっています。実は、修正案も、これを中心の一つとして出されることが取り沙汰されています。私は、さきの国会でも、そんなことはあり得ないと主張し、大切なのは消費者被害を回復することが主眼の法律だからということを主張してきたところです。

 そこで、まず、前独立行政法人国民生活センター理事長の野々山宏さんにお聞きしたいと思います。

 最高裁は、昭和六十三年の判決で、不当訴訟とされる厳しい基準を明示しています。濫訴、濫訴と心配し、濫訴防止指針なるものをつくると報道されていますが、特定適格消費者団体の提訴が、昭和六十三年の最高裁判決の基準に照らして問題のない場合でも、濫訴だ、不当訴訟だと言われることがあるとしたらどう思われるか、これが一つ。

 二つ目に、野々山さんは、経歴も、明示していますように弁護士ですから、よく御存じかと思いますが、今述べた、昭和六十三年の最高裁判決が不当訴訟の基準を厳しく設定した根拠、真意とは何であるか、このことについてお聞きします。

○野々山参考人 第一点目は、あの六十三年の最高裁判決では、不当訴訟というのは、事実面、法律面で明らかに根拠を欠くような場合、それを認識している場合、あるいは認識すべきだったというような場合、そういう場合に限り、不当訴訟だというふうに考えられていると思います。

 やはり、そういうものでは確かに不当訴訟だと思いますけれども、今言われている濫訴というのは一体何なのか、それ自体、私ははっきりよくわかりません。今差しとめ請求でやっていることが濫訴だとおっしゃるなら、それは具体的に例を挙げて言っていただきたいというふうに思っておりますけれども、そういう根拠、こういう事実面、法律面で明らかに根拠を欠くようなものについて、訴訟すること以上に要件を緩和するようであれば、これは問題であるというふうに私は考えております。

 それから第二点目は、やはりこれは、最高裁がこの判決をしたのは、あれは憲法上の権利、いわゆる法的救済の最後のとりでが裁判所であるということであります。ですから、その裁判所で裁判を受ける権利というものは国民の最低限の権利だ、この紛争の消費者問題でも全く同じことだというふうに考えておりますので、その点を十分考慮して対応を考えていただきたいというふうに思っております。

○穀田委員 私は、この点は極めて大事な点だと思うから質問したわけであります。

 そこで、次に、消費者支援機構関西の西島秀向さんに質問します。

 先ほど、皆さん方の差しどめ請求訴訟における検討グループで何度も検討しているということだとか、それから、限られた人的、物的資源を活用して差しどめ請求訴訟を実施しているということが陳述されました。そこで、今度の制度について、濫訴と言われるような訴訟を提起することができるかということについて、実体験を踏まえてお話しいただければ幸いであります。

○西島参考人 今、野々山参考人がおっしゃいましたけれども、まず、何をもって濫訴と言われるのかということ自体が非常にわかりにくいというふうに受けとめております。これだけはわかっていただきたいということは、新訴訟制度は、消費者が実際にこうむった被害分、これを回復する、できるだけということでして、消費者が被害分以上にもうけるというわけではないというのが一点目。

 それから二点目に、消費者団体も二段階目の最後までいってようやく費用を賄えるというだけですので、多額の利益を得られるわけではないということになっております。

 それから三点目、ケーシーズ、先ほど御説明しましたように、限られた人的、物的資源ということなんですけれども、そういう条件にありますので、差しとめ請求訴訟と同じような検討を繰り返した上で、二段階目の手続の負担を考えるとさらに対象事案を絞り込まなければならないというふうに考えております。

 先ほど申し上げましたように、差しとめ請求では、この六年間で六件というのがケーシーズ、適格団体全体でいいましても、十一団体で制度開始から六年たって三十一件というような状況です。

 それから四点目に、そういう意味で、一部では濫訴というものが非常に抽象的に懸念されているようですが、やみくもに訴訟を起こすということ自体、当事者である私たちには想像できないというところであります。

 五点目、最後に、むしろ心配なのは、現実的な濫訴の心配などないのに、不必要な濫訴防止の基準なりガイドラインなりつくられて、私たちの活動が阻害されてしまうということです。どうか私たちの活動を萎縮させないようにしていただきたいなというふうに思っております。

○穀田委員 その限定性とその逆の効果も含めてお話しいただきました。ありがとうございます。

 そこで、経団連の阿部泰久さんにお聞きします。

 PL法のときも、差しどめ請求訴訟のときも、今、西島さんからお話ありましたが、抽象的な濫訴のおそれということが声高に言われている例もありました。これまで日本国内で、消費者から事業者に対する訴えで、これは濫訴だと思われる例を一つか二つ挙げていただければ幸いです。

○阿部参考人 ございません。

○穀田委員 ないということがはっきりしたということであります。

 そこで、次に消費者団体連絡会の河野康子さんにお聞きします。

 先ごろ、訴訟制度についての御要請で、消費者、事業者双方の利益になりますと述べておられます。事業者にとって積極的な意味があるということも提起だと思うんですね。その点をもう少し詳しくお話しいただきたいのが一つ。

 二つ目に、修正の動きがあるということについては皆さんよく知っておられます。そこで、二つの動きがあります。一つは、制度の濫用等によって経済活動に悪影響を与えないようにするための方策ということで、濫用があたかもあるかのような形で防止策を提示する動きがあると。これについて。

 もう一つ、先ほどもお話ありましたように、訴えを提起するに当たって、一定の数の対象消費者からの授権を有するという考え方、私自身はこの法律の持っている趣旨と大きく反すると思うんです。

 三つになりましたけれども、御意見をお伺いしたいと思います。

○河野参考人 まず、一つ目なんですけれども、この制度ができますと、事業者それから消費者双方に利益になるというのは、先ほど申し上げましたように、やはり、消費者が安心して購買行動に移れる、契約を結べるという環境整備には、この新しい制度は非常に役に立つというふうに思っております。

 先ほどから、経済活動が萎縮という言葉を伺っておりますけれども、これまで、消費者が少額多数でこうむってきた被害というのは、この日本の経済活動が萎縮するというふうな言葉とは全くそぐわない形の、本当にささやかな状況だというふうに私自身は感じております。

 本来、事業者が法令に反した行為により消費者の利益を侵害しなければ、この制度というのはワークしないという大前提で私たちはこれを見ておりますので、そういった意味でいうと、この制度ができて、事業者の皆さんも、自分たちの顧客に対してこういうふうに向き合おうということで、しっかりと改めて皆さんの会社の中のさまざまなルール等を見直していただく、そのことでより健全なマーケットになるのではないかというふうに思っております。それが一点目です。

 二点目は、私も、今先生が御説明してくださいました修正案というのがどういう形なのか、よく存じ上げませんけれども、濫訴を防止するということが書き込まれようと書き込まれまいと、私は、濫訴は起こらないというか、起こりようがないというふうに思っております。

 ですから、たとえ濫訴防止の措置というのが書き込まれたとしても、特定適格消費者団体の認定、監督のガイドライン等、制度運用の適正さを確保するためのそういったものは、何らかの形で決められるというふうに思いますので、そこに特段書いていただいても書いていただかなくても、制度運用上の制限になるというふうには私自身は思えません。つまり、濫訴が起こりようがないというふうに考えております。

 それから三番目の、第一段階でやはり実際の被害者からの申し出がないと訴えられないという件なんですけれども、その点は、当然のことながら、最初から何度も申し上げていますように、私たちは、一人一人、消費者被害を受けたなと思っても、なかなか訴訟まで個人では行き着かないというのは先ほどから何度も何度も述べているとおりでございます。特定適格消費者団体の皆さんの方でさまざまな情報網、それから個々の消費者の訴え、そういったデータを集めてくださいまして、その中から、これはやはり救済に値する、そういうふうに見つけてくださったものに対して最初のところはやっていただくというのが、やはり一番、消費者にとってみますと、現行の法制度のことを考えましても、助けられる道ではないかというふうに考えております。

○穀田委員 では、最後に西島参考人にお伺いします。

 今ありましたけれども、一定の数の対象消費者からの授権を有する、ちょっと違うんじゃないかと私は思っているんですけれどもね。あっちゃこっちゃ話はしているんだけれども、明確な答えが余りなかったので、すぱっと言っていただければいいです。

 それともう一つ、法に基づく今後の訴訟についてのシミュレーションをしているという陳述がございました。私は、意思確認だとか実際の局面での大変さが本当によくわかりました。そこで大変だからこそ、適格消費者団体の方々が、消費者の方々の泣き寝入りがないようにするという立場での御努力に敬意を表したいと思うんですね。

 私は、さきの国会でも質問したんですが、財政的支援というのは、公的な補助それから援助制度が必要だと主張していたわけですよね。そうすると、大体政府というのは、控除の話とか適当な話をして、適当な話と言ったらちょっと悪いけれども、はっきりしないということなんですけれども、私は、もう一歩踏み込む必要があると言っているんですよね。

 いろいろな制度はあるわけですから、その辺の、もうちょっと知恵を出す必要があるんじゃないかと思っているんですね。その知恵は何かございませんかということ。この二つだけ。

○西島参考人 一点目につきましては、今の制度でも本当に濫訴は懸念されないというふうに私どもは思っておりますし、逆に、対象を絞り込み過ぎかなというふうに消費者の立場からは考えておりますので、さらに訴訟になる制限を設けるというようなことは全く必要がないというふうに考えております。

 それから、先ほど、シミュレーションをしているということについて御質問がありましたけれども、特に、二段階目の通知、これを個別の消費者に対して行うときに、一段階目で相当の年数が経過した場合に、例えば、消費者が死亡してしまったり相続が生じたような場合だとか、あるいは、対象の消費者が大学生であった場合、大学生のときに被害を受けたというような場合、その後、卒業して、全国ばらばらになって、就職してどこかに行かれたというようになったりというような場合を考えたりしておるんですけれども、そういった場合、メールアドレスが変わってしまったというようなことがあったり、あるいは、個別に住所を追いかけてその本人と意思確認を行うというようなことを考えると、非常に大変だというようなことがあります。

 そういう意味では、消費者庁なりが、民間企業でコンピューターシステムで顧客管理を行っておられるような、そういった方法だとか仕組みというのをこの制度でもつくっていただいて、そういったシステムを通して特定適格消費者団体と消費者がスムーズに本人確認だとか意思確認ができるようにしていただけると非常に助かると思いますし、被害救済に非常に資するのではないかなと思います。

○穀田委員 ありがとうございました。

○阿部参考人 委員長、答弁の補足をさせてください。

○山本委員長 阿部さん。

○阿部参考人 先ほど、端的にございませんと答えましたが、そのような訴訟が勝ったことはないという意味でございますので、提起自体はざらにあると思います。

○穀田委員 要するに、勝訴はなかったということであります。ということは、あり得ないということを私は言っておきたいと思います。