国会会議録

【第186通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2014年5月27日)


○穀田委員 きょうは、まず建築基準法について質問します。

 仮使用承認制度について聞きます。

 これまで特定行政庁しか審査承認できなかったけれども、今回、これを民間検査機関でもできるようにしようというものです。なぜ特定行政庁しかできないとしたのかということになるわけですけれども、仮使用の審査承認を民間確認検査機関ができるようにすることによって、事故など発生した場合の責任はどうなるのか。

 また、私は、この間ずっと姉歯事件以来やってきましたけれども、民間確認検査機関といえば、耐震偽装事件、それから今言った姉歯事件のときに、建築物の安全を守るべき建築確認を営利目的の民間会社に任せた規制緩和が背景にあったんじゃないかという問題がありました。安全が、一部悪質業者による圧力や買収によりゆがめられることがないのか、その担保はどうなっているのかについて、簡潔にお答えください。

○坂井大臣政務官 仮使用を認めるこの制度につきましては、今までは特定行政庁のみが個別に裁量性のある判断を行ってまいりましたけれども、今回の改正は、指定確認検査機関が仮使用を認定することができることとするものでございます。

 このため、指定確認検査機関に裁量の余地を残さないように、客観的に判断ができて、かつ十分な安全性を確保し、発災を防止する認定基準というものを国土交通省においてまず定めてまいります。

 そして、指定確認検査機関に全て委ねるというわけではございませんで、特定行政庁が報告の中身を確認いたしまして、認定基準に適合しないと認めるときはその効力を失わせることができるということにしておりますし、また、指定確認検査機関が認定基準に適合しない建築物の仮使用を認定したというような、ある意味、やってはいけないことが出てきた場合は、当該機関を行政処分の対象といたします。

 こうした措置によりまして、今回の改正を原因とした安全性を損なうというような問題は起こらないのではないか、こう考えておりますけれども、今後とも、特定行政庁と連携をし、指定確認検査機関等に対して十分な周知を行うことによりまして、制度を適切に運用できるよう取り組んでまいりたいと思っております。

○穀田委員 今ありました、起こらないのではないかということでは困るわけで、起こらないと言ってもらわないと困るわけで、もちろんそういうことについて言えば、私、何でこんなことを言っているかというと、民間確認検査機関については営利目的で競争を認めたままということと、それと、特定行政庁が建築確認検査の責任を持つ仕組みについて、やはり曖昧では困るわけですから、そこを言っているんだということを御理解願いたいと思います。

 次に、容積率制限の合理化について少し聞きます。

 この改正で、地下室の床面積を延べ床面積に算入しない特例を老人ホーム等についても適用するとしています。かつての改正で、マンション等にこの特例で、傾斜地に巨大地下室マンションが建設され、社会問題になりました。お年寄りの方々が住む老人ホームでは、こうしたことが起こらないという保証はあるのでしょうか。

○坂井大臣政務官 地下室マンションの問題等々、以前ございまして、平成十六年に法改正を行って、地方公共団体の条例により対応してきたところでございます。

 今回も、この不算入の対象に追加される老人ホーム等について、住宅と同様の問題の発生が懸念をされます。なので、この条例により同様に制限できるよう措置していきたいと考えておりまして、地方公共団体が条例を準備する期間も考慮いたしまして、本特例の施行期日を法令の公布日から一年以内としております。

 国土交通省におきましては、地方公共団体において条例の制定や改正が適切に行えるよう周知徹底をし、連携をして取り組んでまいりたいと思っております。

○穀田委員 これも、何でこんなことを言っているかというと、実は九四年六月の法改正時に、我が党の議員の質問で、地下に二階とか三階とか、敷地で広大な地下面積をつくる、こういうことになるんじゃないか、この質問に対して、居室を地下につくってはいけないという規定がございますので、それで実際上はそういうものはつくってこないだろう、利用されないだろうというふうに思っている、こう答弁しているんですよね。ところが、今ありましたように、社会問題にまでなった経過があるので確認をしたと。やはり今までの経過がありますから、こういう点を確認しておきたいと思ったわけであります。

 次に、建設業法改正案について質問します。

 まず、入札不調、不落急増の要因をどう認識しているかということであります。

 各地で入札不調、不落が増加し、生活に身近な事業が影響を受けている事態も生まれています。四月に共同通信がアンケート調査した内容を見ますと、都道府県が平成二十五年四月から十二月に実施した公共工事の入札のうち、受注業者の決まらない入札不調などが占める割合は平均七・八%で、例年の二から三%に比べ急増している。宮城が最大の二五・七%、仙台は大臣がどこかで答弁していますけれども四八%、沖縄で二二・三、岩手で二一・八が続いて、住宅の高台移転など震災復興が本格化した影響が大きい、沖縄は以前から離島の工事で不調が目立つ、こういうふうに書いています。

 生活に身近な工事の例では、尼崎公害訴訟の環境対策工事、尼崎市の国道四十三号沿いに住む公害患者らのための歩道橋のエレベーター設置工事が、昨年八月に公告したけれども入札が不調となっていた例もあります。

 被災地を初め、全国的な入札不調、不落の原因が何なのか、背景は何なのか、そういう点の認識をお伺いします。

○土井大臣政務官 先生御指摘いただきましたように、入札の不調の現状、原因というものは、被災地と全国で状況が異なると認識をいたしております。

 まず、被災地の入札不調につきましては、発注工事の増加に伴い、条件の悪い工事を中心に発生しておりますけれども、平成二十五年度は、二十四年度に比較すると、おおむね減少傾向であります。一方、不調となった工事につきましても、再発注時にロットの大型化など工夫を行うことにより、ほぼ契約に至っている状況であり、工事は着実に進んでいると考えております。

 全国的には、現在、入札不調が起こっているのは、土木工事よりもむしろ建築工事が中心でございまして、特に公共団体が発注する大型建築工事におきましては、繰り返し入札不調となるものが多く見られております。この一番の原因は、やはり、予定価格が実態の価格に合っていないことが原因になっているというふうに考えております。

○穀田委員 今の土井政務官によると、入札不調の原因として、予定価格が実態価格、実勢価格に合っていないということなんですね、お話がありましたけれども。

 国交省は、大体、労務単価の引き上げだとか自治体による歩切りの根絶など、予定価格の引き上げなどを行って一定の効果が上がっている、こう見ているわけですね。私は、資材だとか人件費だとかというのが上がって、それに見合って予定価格を引き上げるのは当然のことだと思うんですね。ただ、不調、不落の原因、背景について、発注価格、予定価格の設定だけが問題ではないと私は考えます。

 私の住む京都の、地元の建設現場の話を聞きますと、公共工事を中心に仕事がふえているのは確かだ、しかし、これまでコスト削減を強いられ、ぎりぎりまで人員を整理してきた、突然に発注がふえても人を確保するのが困難で、発注されても受注できない。十人、二十人で仕事をやってきたところに三十人が必要な仕事があっても、人員を確保ができないから対応できないなど、入札参加するにも受けられないという声もありました。

 やはり、不調、不落の原因として、地域業者自身が疲弊していること、それから、技能労働者の不足があることをきちんと見ておくべきではないかと私は思うんですね。したがって、入札不調を抜本的に改善するには、工事を請け負う業者の経営基盤の改善と技能労働者の確保、育成が不可欠であります。

 そこで聞きたい。今回の建設業法等の改正案及び議員立法として予定されている品確法によって、この不調、不落問題についてどのような効果が発揮できると考えているのか、お答えいただきたい。

○高木副大臣 御指摘のとおり、業界全体が疲弊している、これまで公共工事をどんどん減らしてきたという中で厳しい状況にあると思いますが、そうした中で、不調、不落の今の御質問でございます。

 先ほど土井政務官も、入札不調の原因というのは予定価格が実態の価格に合っていないことと認識しているという答弁をしましたけれども、おっしゃるとおり、人材の確保に非常に苦労しているという声も聞きます。

 それで、しっかりと総合的にいろいろな対策をしていかなきゃならぬというような思いでございまして、一つ挙げますと、まさに国と地方が統合した形で発注見通しを公表していく。そうすると、事業者も、次はどんな工事が国から出る、地方から出るというのがわかりやすくなって、しっかり対応しやすくなるのではないか。あるいはまた、技術者等の不足状況に応じて発注ロットを大型化するという点、それから主任技術者の兼任要件の緩和、そういったようなところもやっているところでございます。

 また、現場の技能労働者の高齢化や、若年入職者の減少といった構造的な問題が生じておりますので、このたびの建設業法の改正案には、中長期的な視野から、こうした状況に歯どめをかけることを目的としておりまして、まず、技能労働者に適切な賃金が支払われるよう、先ほどから議論されておりますけれども、ダンピング対策の強化を図るということにいたしました。ダンピング防止を公共工事の入札契約において基本とすべき事項に追加する、これにより、地方自治体も含めた発注者に対し、ダンピング対策の強化を要請することが可能になります。

 さらに、入札の際に、入札金額の内訳を提出することにします。これによって、見積もり能力のない業者を排除するということが可能になります。

 また、事業者団体等が、技術者、技能者の育成についてすぐれた取り組みを行っているという場合には、国が積極的な支援を行うということにしております。

 中長期的な担い手の確保に向けて、現在、議員立法として品確法改正案が提出されておりますけれども、一体となって改正法の的確な運用を図ることによりまして、担い手の確保のための取り組みを一層強化していきたいというふうに考えているところでございます。

○穀田委員 それはそのとおり。私、言っていることが全部悪いと言っているんじゃないんですね。ただ、そう簡単にいくかという話をしているんですよね。

 賃金の問題は後で言いますけれども、私は、この間の問題点を洗い出して、今副大臣からありましたように、見通しの公表というようなことを言っていましたけれども、確かに、先の見える形で業者対策、技能労働者の育成、若年労働者対策の充実が必要だと思うんですね。

 先ほど私は京都と言いましたけれども、京都府内でもこの間、建設業者が倒産、廃業に追い込まれて、業者数は、ピーク時の、九九年度だと思うんですけれども、約七割で、京都でいいますと一万一千六百六十五社に落ち込んでいます。京都府建設業協会会長の岡野益巳さんも、地域の建設業は、地域の経済、雇用を支え、インフラ整備や住民生活の安心、安全を守る上でなくてはならぬ産業、地元の業界の維持、育成のために、後継者、若者のためにも行政が手を打つべきだということで、府議会で参考人としてこの実態を発言しているほどなんですね。そういうことを踏まえて、私どもとしては今、育成その他についてきちんと方向性を持ってやるべきだということを言っているわけですね。

 そこで次に、政府は、大型開発事業はこの間、国際競争力の強化ということで熱心にやっているわけですけれども、そこの点について少し聞きたいと思うんですね。

 消費税増税がありましたから、それの景気の腰折れを防止するために、政府は、二月に成立した補正予算の公共事業費は九月までに九〇%執行を指示するなど、公共事業予算の消化を先にありきとばかりに進めています。しかし、入札不調が続いている状況下で、一定の地域内で大規模工事が発注されると、業者や技能労働者が集中し、小規模工事での不調割合が高まるおそれがあります。

 だから、当面、業者と技能労働者の絶対的不足を考慮して、東日本大震災被災地の復旧復興事業や全国の防災事業、老朽化対策など、住民生活に直結する身近なインフラの整備、住民生活に欠かせない事業を最優先して実施するようにすべきじゃないかと思うんですが、その辺、いかがですか。

○土井大臣政務官 今御指摘いただきましたように、住民生活に密着している小規模な公共工事を優先してやるべきだという御指摘をいただきました。

 新設工事や大規模工事に比べますと、手間がかかることや効率性が悪いケースがあるなどにより、業者が受注を敬遠するという指摘もございます。このため、主任技術者が兼任できる範囲の拡大を図るなど、橋梁補修などの維持修繕工事についても四月より新たな歩掛かりを設けるなど、施工実態を反映した積算基準の見直しを行ったところでもございます。

 とにかく、地元で頑張っていただいている建設産業の皆さん方が、地域の守り手ということで事業に積極的に取り組んでいただくこと、このことが一番大切だと思っておりますので、入札時には地域要件の設定など、地元建設企業の受注機会の確保などを図ることにいたしておりますし、複数年契約の導入や共同受注などを通じて、地元に精通した企業が地域のインフラ維持管理等の業務を計画的、安定的に受注できるよう配慮をしながら進めております。今後とも、バランスのとれた公共工事の推進を図ってまいりたいと思っております。

○穀田委員 土井さん、仕掛けはわかるんですよ。だけれども、そのことが実態として下でそうなっているのかという話をやはり見ないと、かけ声はいつもそれで割と調子ええねんけど、どうしても現実はそうなっていないということで、地方紙などは、それぞれの保育所だとか小学校の跡地利用だとか病院の問題だとかというのが、ずっと後回しになっているということを全部言っているわけですよね。それは、大型事業にどんととられると、実際にはそういうものがいないという現実があるわけでして、だから、優先的なそういうやり方というのをきちんとしないとだめなんじゃないか。

 だから、そういう意味でいうと、国際競争力強化、国土強靱化という名のもとに、大型工事を事実上優先するというやり方自体を直さないと、先ほどの話が、何というんですかね、実際にやられないという結果になりますぜという話をしているんですよね。そこはよく御理解いただきたいと思います。

 そこで、労働者の賃上げの問題であります。技能労働者の育成、若者就労増へ賃上げは不可欠で、労務単価の引き上げなどが反映しているかどうかという問題について聞きます。

 公共工事設計労務単価の引き上げが現場の労働者の賃上げにどう反映しているか、その進捗状況について聞きたいと思います。

 労務単価は、二年間で二三%引き上げられました。現場の労働者の賃金はどれだけ上がったか、把握していますか。

○毛利政府参考人 建設業の担い手を将来にわたって確保していく上では、賃金を含めて処遇の改善を図っていくということが重要でございます。

 御指摘ありましたように、昨年四月には、十六年ぶりに設計労務単価を一五・一%と大幅に引き上げましたが、その後、十月時点の調査結果におきまして、さらなる賃金の上昇傾向が認められましたので、これを反映するために、本年二月、全国平均で七・一%の再引き上げを行いました。

 さらに、この設計労務単価の引き上げが実際の賃金の引き上げにつながるように、建設業団体に対しまして、大臣、副大臣から直接、繰り返し、適正な水準の賃金を支払うように要請をいたしております。

 これを受けまして、各建設業団体におきましても、適切な賃金確保について決議を行うなどの取り組みを進めていただいておるところでございまして、昨年六月末時点で、賃金支払い実態について国交省が行いました調査によりますと、賃金を引き上げると回答した企業はまだ三七%でございましたが、本年二月に再度調査いたしましたところ、これが五一%と拡大をしておりましたし、この五一%の数字は、元請から二次下請まで見ても、ほぼ同様の傾向にありました。

 また、技能労働者に限りませんけれども、毎月勤労統計調査による、いわゆる職別工事業の賃金水準で見ましても、建設業の場合、全産業を上回った上昇率というのが確認されております。

 私どもとしましては、引き続き、下請取引実態調査等の結果を受けまして、適切な賃金支払いの要請をしてまいりますし、また、例年十月の公共事業労務費調査に加えまして、サンプル数を絞って、ボーナスも把握する形で七月に調査をするなどを通じまして、賃金上昇の動きが下請を含めた技能労働者に確実に行き渡るように努めてまいりたいと考えます。

○穀田委員 努めてまいりたいと。

 何ぼ上がったかという話を聞いているわけで、要するに、まだわからぬということですわな。上げると言っている。上げると言っていることと、上がった、何ぼ上がったかという話は別やねんね。だから、それを聞いているわけですやん。

 それで、私、全京都建築労働組合、略称は京建労ですが、その方々から、現場の労働者の話を聞きました。

 まず、京都市発注工事現場に行って、そこで、なぜそういうことを言っているかというと、毛利さんも京都にいはったから。京都の現場ではどうか、設計労務単価は知っているかと十五人にアンケート調査をやって、現場へ入っていると、知っている人は四人。労務単価が上がったことは知っているか、二人。こういうふうに、現場の労働者のところでいうと、やはりそういう認識が確実に、着実に浸透していないという現実があります。

 さらに、京建労は全建総連傘下ですから、重層下請構造のもとで頂点に立つ元請企業が現場の実態を知り、要求に耳を傾けることが必要だということで、企業側、組合側の共通認識のもとに、一九八三年から企業交渉を行っているんですね。この四月に行った交渉の中で、法定福利費は従来から込み、それから別枠記載のつもりはないという認識の会社があるわ、それから、協力会社二百社のうち標準見積書を活用しているのは八社という回答が見られているんですね。だから、賃金の現状、そういう事実認識、今言っている下請構造のもとでの実態、こういったことからしますと、まだまだ現場の労働者まで賃上げは反映していないということが見てとれます。

 中にはこういうのもありまして、受注額が引き上げられているわけですけれども、元請業者の中には、これまでの受注で出た赤字を取り戻すということで賃金の引き上げに反映させないところもあるし、やはりそういう意味で、先ほどありましたが、私は、現場の賃金がどうなっているかということを含めて、労働者の賃金を直接引き上げるために公契約法などの制度が必要だということが改めて浮き彫りになったと思うんですが、いかがですか。

○太田国務大臣 最後に公契約法のお話がありましたが、前半のお話は、とにかく労務単価の引き上げが最前線のところまでいかなくちゃいけない、そして社会保険も入ってもらわなくちゃならないということについては、さらに我々としては努力して、徹底してまいりたいというふうに思っています。

 公契約については、建設業は技能労働者の処遇改善や若手入職者の増加を図るためにも技能労働者の適切な賃金水準を確保する必要がありますが、賃金等の労働条件は、労働基準法等の関係法令に反しない限りにおいて労使が自主的に決定するとされています。

 公契約法によって賃金等の基準を新たに設けることについては、既に条例を運用している九つの地方自治体の状況等を注視する必要がありますが、今後も幅広い観点からの慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。

○穀田委員 これもいつも私は言うんですけれども、大体平行線でいるので、それはそれとして承っておきますけれども、やはり、行政が交渉や話し合いの場を確保するイニシアチブを発揮することが大事じゃないか。労使間と言うんだけれども、現実は一人親方で相手にもされない状況が広く存在しているのがこの業界ですよね。だから、私は、技能労働者の組織する労働組合が対等に交渉できるように、行政、政治が役割を果たすべきじゃないかということを一貫して主張しているということを記録しておいていただきたいと思います。

 あと、品確法について聞きます。

 この法改正に、労働者の賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境の改善を加えた意義について聞きます。

 公共工事品確法の改正案では、このことが新たに規定されましたけれども、私は、品確法制定時に、この規定をきちんと明記すべきだと当時申し入れたんですね。残念ながら、かなわなかったわけですけれども、今回規定されたことについて、大臣はどういう感想を持っておられますか。

○太田国務大臣 建設業の置かれている状況を考えますと、技能労働者の処遇改善というのは非常に大事なことだというふうに思います。

 このたびの品確法改正案におきまして、公共工事の品質を現在及び将来にわたって確保する上で、賃金その他の労働条件、安全衛生その他の労働環境が改善されるよう配慮されなければならないという旨が盛り込まれたということは重要な意味があるというふうに考えています。

 建設投資の急激な減少やダンピングの横行など競争の激化によりまして、建設企業の疲弊や下請へのしわ寄せ、現場の技能労働者の就労環境の悪化により離職者の増大などを招きました。こうしたことが起こらないように、今般の建設業法等の改正法案とあわせまして、引き続き技能労働者の労働環境の改善に向けて強力に取り組んでいきたいと思います。

○穀田委員 ちゃんと取り組んでいただきたいと思うんですね。

 私は当時、公共工事の品質を確保するに当たっては、建設産業の特徴である元請と下請という重層的な関係を考慮し、直接公共工事を施工する事業者の対価及び作業に従事する労働者の賃金、労働時間等の労働条件を適正に確保すること、こういうことが必要じゃないかということを当時提案しました。

 実は、もう一点、そのとき私は提起しているんですね。それは、労働条件、労働環境の改善の責務は発注者も同様と違うのかということを私は提起したんですね。せっかく公共工事品確法の理念と事業者の責務に加えられたけれども、発注者の責務には規定されていないように見える。発注者こそ労働者の労働条件や労働環境の実態を把握して改善させるべきだと思うけれども、国交省としてどのようにこの点は具体化するおつもりか、聞きたいと思います。

○太田国務大臣 よい品質のものをつくるためには、一部の発注者の、安ければいい、この数年そうした傾向があって、逆に、受ける方も仕事がないものですから赤字覚悟でとっていくというようなことの、悪い方向へのスパイラルが働いたということがあったと思います。このため、発注者において、市場における取引価格等を的確に反映した予定価格を適正に定めることが重要であります。

 また、ダンピング受注が行われると、下請企業、現場の技能労働者へのしわ寄せによりまして、技能労働者等の就労環境が悪化するという可能性がございます。今回、低入札価格調査基準の設定等のダンピング対策の強化を、この法改正ということの上で図ってまいりたいというふうに思っています。

 これらの発注関係事務が適切に運用されるように、今後、国としてしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

○穀田委員 法案では、発注者の責務の中に、基本理念にのっとりという項目が書いてはあるんですね。だけれども、少なくとも〇五年の当時、私は、こういうものを書くべきじゃないかと言ったわけですよね。やはり今回も、発注者の責務というところにはっきり書く必要がある、労働条件、労働環境の改善の責務があるんだ、そういう具体的な項目を書かなきゃならぬ、そういうことが必ず必要だという時期が私はまた再び来ると思います。そのことを述べて、終わります。

○梶山委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。